昔っからクラスにひとりやふたりは、普通とはちょっと違うなと思うクラスメイトがいたものだ。変なところにこだわって(あくまで自分の基準からみてだ)いて少々付き合いにくかったり、奇抜な行動が見ていて面白かったりと、際立った部分は人それぞれだが、近年はこうした人々の中には、「発達障害」と診断される人も多い。


 発達障害とは、一口にいうと平均的とは違う形で「発達」していく状態だ。自閉症(自閉症スペクトラム障害)、アスペルガー症候群、ADHD(注意欠陥多動性障害)などは典型例。「集中力が続かない」「すぐに人と衝突する」「授業中に席を立って動き回る」……ほか症状の現われ方はさまざまだが、行動がまわりとの関係で問題となることも多い。


『発達障害の素顔』——。タイトルは一見、発達障害の人々の行動や考え方を追ったドキュメンタリーのようだが、そこはブルーバックス。発達障害の人に特有の視覚認知から科学的に問題を読み解いていく。


 子どもは生後〈8ヵ月までは神経細胞同士の結合が大量に増加するのに対し、その後は不要な結合を減らし、より能率的な結びつきになるように、神経細胞の活動の頻度や細胞同士の連携の頻度の多さなどから状態を変化させていく〉。成長するにつれて人は全体を見わたせる能力や社会性が身についていくのだが、〈発達障害では健常者に比べこの能率化が遅れたり、うまく進まなかったりするようなのだ〉という。


 発達障害の人は、一般の人から見て独特な感覚や感性を持ち、対人関係がおかしくなってしまうことも多い。ただ、悪い面ばかりでもない。


 通常の人のように神経細胞が能率的な結びつきをすると、〈社会の維持にとっては便利な反面、先入観が強くて独断的な判断に陥る可能性もある。逆にいえば、自閉症者は、先入観なしに物事を判断する資質をもっているともいえるのだ〉。


■自閉症に期待感!?


 最近では、アスペルガー症候群だったといわれているアインシュタインやアップル創業者のスティーブ・ジョブズなど、発達障害の人が持つ特異な才能も注目されるようになった。著者の研究室に自閉症が疑われる生後6ヵ月の赤ちゃんを連れてきた母親は〈世間が想像するような、悲壮な感じは決してなかった。「この子も自閉症かもしれない」の背景には、むしろ「そう思う方が、楽しいかもしれない」という気持ちが大いに感じられた。「うちの子は、何か人と違った才能があるのでは」という強い信念があった〉という。


 ちなみに、自閉症の人は〈言葉の獲得が遅れる反面、外国語の獲得に突出した能力を示す者もいる〉という。理由は完全に解明されたわけではないが、著者は〈言語というフィルターを通じて音を聞いていないことが、この能力の背後にある。聞きなれた母国語と聞きなれない外国語という区別なく、音として、聴いたまま口にできるのかもしれない〉とみている。


 昔なら「ちょっと変わったヤツ」で済まされた人まで発達障害と診断され、治療されることに違和感がないわけではない。ただ、本書を読んで、発達障害の理解が進めば、ちょっとトゲのある感じだったり、普通とは違う反応にも、いちいち腹を立てないで済むかもしれない。これは発達障害の人を無用に傷つけないだけでなく、健常者の側にもストレスをためずに済むメリットがある。


 気になったのが、いくつかある発達障害か否かを確認するテスト。自分の回答が、ことごとく発達障害の傾向を示していたことだ。「もしかして、自分には天才の資質があるのかも!」と前述の母親のような期待感が沸き上がった。40代後半になっても、その才能は発揮されてないけど……。(鎌)


<書籍データ>

『発達障害の素顔』

山口真美著(ブルーバックス800円+税)