メディセオが全正社員をエリア採用にすることが日経新聞(5月3日)で報じられた。原則として転勤をなくし、離職を防ぐことが狙いだと書かれていたが、これは「地域包括ケアシステム」に対応するための“一石二鳥”戦略だろう。


 昨年、某製薬企業がスポンサーとなっている情報紙の取材で茨城県を訪れた。その際、当該企業のMRが同行してくれたのだが、「やっと地元に戻ってこられた」らしく、「やっぱり地元は違います。高いモチベーションを維持できています。地域医療に貢献したい」と話してくれた。


 16年度調剤報酬改定で新設された「かかりつけ薬剤師指導料」の施設基準には、▽保険薬剤師として3年以上の薬局勤務経験▽当該保険薬局に週32時間以上勤務▽当該保険薬局に6ヵ月以上在籍——という“在籍期間シバリ”が盛り込まれた。これは、地域包括ケアにコミットする薬剤師は、ひとつの薬局に長期間勤務し、時間をかけて地域における人脈を構築していく薬剤師である!という厚生労働省からのメッセージに他ならない。


 MRやMSが、地域医療にコミットする多職種のネットワークの中に「企業人」として入っていき、仲間に入れてもらうには、地域のスペシャリストになければならない。


 私は、このような考えから、15年4月10日に都内で開催された日本CSO協会の14年度活動報告会特別講演の中で、「MRを出身地配属&原則転勤なしにすべきだと考えます。自分を育ててくれた地域なら、アウトカムをよくしようと思うはずで、副作用報告を怠ることも考えにくい」と“提言”させていただいた。CSO関係者向けだから“リップサービス”をしたわけではない。本当に、心の底から出身地配属&原則転勤なしにすべきだと思っている。


 だから、AR※が1800人に達したメディセオの「エリア採用戦略」が成功することを願っている。


※AR:Assist Representativesの略。MR認定試験に合格したMSや薬剤師などにメディセオが付与している社内呼称


…………………………………………………………………
川越満(かわごえみつる) 1970年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。