【今週の提言】

ASICTUSの法則    

 ユート・ブレーン時代にお互いに切磋琢磨していた千田壮修さんが社長を務めているエム・シー・アイが6月24日、興味深い調査結果を明らかにした。

『MRお役立ち度ランキング』を調べたところ、オウンドメディアでの情報提供をMR活動と連動させることで、MRに対する医師の評価が高まる傾向にあったという。

 具体的には、情報確認行動別のMRお役立ち度をみると、「MR単体」では、6.82だが、オウンドメディアの情報をMRに確認する「一方向」では7.34、オウンドメディアの情報をMRに確認かつMRの情報をオウンドメディアで確認する「双方向」では7.88と評価が高まる。

 シェア・オブ・ディテーリング(興味を持ってくれた時間の獲得度合)が高まれば、MRへの好感度も高まるから、今回の結果は当然のことだが、今後はどの企業もオウンドメディアに多額の投資をしてくることが予想される。

 以前にもお伝えしたとおり、MRが医師に面談するチャンスは、地域包括ケアの流れのなかでどんどん小さくなる。そのため、逆に医師等から問い合わせをもらうようなプロセスを製薬企業は、構築する必要がある。近年増えているMSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)も、いずれは「呼ばれてもいないのに訪問するのはプロモーションとみなす」と解釈され、熱が冷めるだろう。

 購買行動モデルは近年、「AIDMAの法則」が“進化”し、「AISAS」や「AMTUL」が主流になってきた感があるが、私は、以下のプロセスが医師にはマッチすると考えている。

Attention(認知・注意)

Search(検索)

Interest(興味・関心)

Consultation(相談・協議)

Trial(試用)

Usage(リピート使用)

Share(共有)

 この頭文字を取って、ちょっと呼びづらいが、「ASICTUS」(アジクタス)と名付けることにする。

 いずれにしても、オウンドメディアを含めたITのみで「ASICTUS」のプロセスを医師に辿らせるのは難しい。Consultation(相談・協議)からShare(共有)まではMRによる人的な活動が必要だ。
 
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川越満(かわごえみつる)1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。