セブン-イレブンが業界2位に転落する日は果たして来るのか——。これまで独走を続けてきたセブン。しかし、この独走体制に待ったをかけるのがサークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングスと9月に経営統合するファミリーマートだ。規模ではセブン-イレブンに匹敵する店舗数となり拮抗力を持つ。現在の2位から3位に転落するローソンも、依然として三菱商事のつながりでのミニストップとの統合話が燻り続け、虎視眈々と上位浮上を狙っている。業界は再編の最終局面入りだが、偶然にも今年、この大手3社の社長が交代した。新しいリーダーを擁した、新組織による覇権争いが始まる格好だが、セブンもカリスマだった鈴木敏文氏の完全引退で現在の地位も安泰ではなくなってきた。


 「セブン-イレブンはいつまでも1位でいられるか」と刺激的な言葉を口にするのはある流通コンサルタントだ。ファミマはサークルKサンクスとの統合で、店舗規模では1万8000店近くまで拡大、1位で今年6月現在1万8000店を展開するセブンに肉薄するのは周知の通り。


 しかし、流通コンサルの指摘はファミマが2010年に吸収合併したエーエム・ピーエム・ジャパンのモデル、看板替えの成功体験があるからだ。


 買収時点で1107店あったエーエム・ピーエムの店舗のうち733店舗をファミマ店舗に改装し、不採算の374店舗は閉鎖された。しかし、エーエム・ピーエムを統合した後のファミマの業績が侮れない数字を残しているのは注目だ。


 ファミマがエーエム・ピーエムを統合直後の10年2月期の営業利益は前期比で8%程度落ちた。だが看板替え、モデル替えが進んだ2011年2月期の決算では約330店を同期中にファミマに転換し、転換後の日販は約2割伸長しているのだ。


 さらにいえば、11年2月期の営業利益は同14%増の382億円にまで引き戻している。平均日販の低いエーエム・ピーエムを統合したため、一時的に業績が落ちたが、ファミマに転換後、即座に立ち直りをみせている。


 もちろん、今回のサークルKサンクスはエーエム・ピーエムの看板・モデル替え店舗数の比ではなく、6000店以上の店舗をファミマ看板、モデルに替えるのだから、相当な力技が必要であり、混乱も予想されるが、コンビニ自体が高度にシステム化された業態であることから、モデルを変えただけで低日販に甘んじていたサークルKサンクスの店舗の売り上げが伸びる可能性もある。


 これに対し追いかけられる常勝、セブン-イレブンも雲行きが怪しくなっている。というのも、2017年度の第1四半期(16年3〜5月期)の営業利益の伸びは前年同期比で0.4%増の微増にとどまった。前年、15年3〜5月期は前年同期比5%以上の伸び率を確保していたから、急減速といっていい。


 この伸び率の鈍化について一般紙などではデフレ傾向が強まったとか、消費の悪化を指摘しているが、ある流通コンサルタントは「鳴り物入りで発売したドーナツが今ひとつ先行きが見えないこと、淹れたてコーヒーに続くヒット商品が出なかったことが響いている」とみている。


 鈴木会長の退任表明が5月だから多少、加盟店や社員の士気に影響している可能性はあるが、それは大したことはなく、逆に前年同期実績割れギリギリの営業増益について業界では「ついに、セブンの連続の既存店売上高プラスという記録、快進撃も止まる日が近いのか」(ライバルチェーン)という声も上がるほどだ。


 強力なリーダー、カリスマが去った後の組織は「脆い」といわれる。当然ながら、今回の業績が一過性で次の四半期で挽回する可能性もあるが、営業利益の微増益には「ついに」と口にした関係者は少なくなかった。上り調子のファミマに対し、強力なリーダーが去ったセブン。ファミマがセブンをキャッチアップする日は近いのか。


 一方、忘れてならないのは3位に転落するローソンだ。3位に転落するからといって、即座に競争力を喪失することも考えられないが、コンビニは地域集中出店(ドミナント)戦略で効率が上がるビジネスモデル。


 一定の地域に店舗が密集していたほうが商品の配送や弁当、総菜の生産、はたまた販売促進策、顧客の認知度など百の利益があって一つの害もなし。ファミマがサークルKサンクスとの統合を急いだのも、セブンが毎年のように1500店以上の大量出店を継続し、ドミナント戦略を強化していたことも一因とみられるが、同じ焦燥感はローソンにもあるはず。


 このため、以前からローソンの親会社、三菱商事と資本提携しているイオンの傘下のミニストップとの統合の観測がチラついている。


 ミニストップは現在、国内に約2200店、ローソンの1万2300店と単純合計すれば1万5000店程度となり、1万8000店近くに拡大するファミマ・サークルKサンクス連合に迫ることができる。


 両社ともにいずれ決断を迫られるタイミングが来るのは確かだ。果たしてカリスマが去ったセブン-イレブンは盤石か。業界の環境が激変するなかで、必ずしも安泰とは言い切れない局面に入ってきたともいえなくない。(原)