週刊現代とポストがここ2〜3年、団塊の世代向けシニア雑誌になってきたことは、シルバーセックス特集や70年代アイドルの特集がやたら多いことなどから明らかだが、もうひとつ最近の両誌に目立つのが、医療・健康記事の大幅な増加である。


 50代半ばという年齢でギリギリまだ“シニア手前”にいるせいか、筆者にはどうにも総合週刊誌における医療特集記事というものの需要がよくわからない。もちろん私自身、目下、視力にまつわる問題に悩んでおり、その関連の記事があればむさぼるように読むはずだし、そんな「自分に当てはまる病気」の記事は、誰もが飛びついて読むに違いない。


 ただ、目の問題と同程度に改善すべき肥満や禁煙の話になるともう、そこまでの知識欲は湧かない。そう考えると、この関連の記事は一本一本がごく限られた読者しか対象にならないように思えるのだが、現代とポストがこれほどまで力を入れるのは、やはり売上げにつながっているのだろう。


 例えば今週は、目次から拾うだけでも、現代には「海外の名医はやらない『手術と薬』」「年令別 この手術はやめたほうがいい」「『内視鏡・腹腔鏡手術』は安全か」「飲んではいけない薬」「『人間ドック』と『脳ドック』が寿命を縮める」等々があり、ポストには「延命治療拒否」「命を伸ばすだけの薬」「『歯科医の値段』のカラクリ」といった記事が載っている。


 そんななか、今週の週刊文春は「取材先から抗議噴出 『週刊現代』医療記事は捏造だ!」という挑戦的な大特集を掲載した。実は文春には前々週の号にも「がんの名医が教える『悪い手術』と『いい手術』 『週刊現代』医療特集のウソ」という記事があったのだが、迂闊にも見落としていた。


 で、今週の文春、この特集の前のページには「がんの名医が警鐘 『こんな手術は断りなさい』 胃がん編」と銘打って、自分たちも医療記事を載せており、こちらは前週の「肺がん編」の記事に続くものだ。タイトルの上では似通ったテイストの記事にしか見えないが、文春は記事のクオリティーについて、現代の杜撰さを激しく批判する。


 それによれば、現代の記事は医療関係者への電話取材で行われていて、コメントの誤解や“捻じ曲げ”があまりにも多い、とクレームが続出している、ということだ。


 薬や手術の専門的な内容になるともう、こちらには判断がつかないが、要はセンセーショナルな見出しの立つ内容にするために、強引なコメントのまとめ方をする。それゆえに、読者に誤った情報を与え、下手をすると症状悪化につながる悪影響すら与えかねない、というわけだ。


 確かに医療の問題は人の命や健康にかかわるテーマだけに、正確さを欠く記事は大いに批判されるべきだろう。ただ、中途半端な知識で“お手軽な取材”をし、見出し優先の強引なまとめ方をする、という問題は、何も医療関係に限らず、あらゆる取材記事に共通する話だ。文春の批判が正しいとするならば、行き着くところ、この話は「じっくりと丁寧に取材すべき話を、編集コスト削減のため、いいかげんに記事化してしまう」という話である。


 スキャンダル報道をはじめ、徹底的な取材をすることで知られる文春から提起されたこの批判は、雑誌作りの基本姿勢、という意味合いからしても、なかなかに重い。


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三山喬(みやまたかし) 1961 年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。1998年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取 材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。2007年に帰国後はテーマを 広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って」 (ともに東海教育研究所刊)など。