7月13〜15日に東京ビッグサイトで開催された「国際モダンホスピタルショウ2016」(モダホス)に参加した。予想どおり、ソフトバンクのロボット「Pepper」がいたるところで“接客”していたが、私の目当てはNTTグループのコーナーだった。


 これまで認知症をみる“街づくり”で実績をあげ、地域包括ケアへの取り組みでは一歩リードしてきた感があるエーザイが、NTTアイティ、NTT東日本とともに医療・介護における多職種連携事業を展開すると11日に発表したからだ。


 同事業の「ひかりワンチームSP」は、多職種間で、患者のケア情報を、簡単に情報発信・共有できるサービスであり、その中でエーザイは本サービスの紹介、ケア目標や方針の設定や課題抽出について話し合う症例検討会のアレンジおよび解決事例の共有などの一体的な連携支援「ワンチームコーディネーション活動」を行うとされている。


 わかりやすく言えば、エーザイの担当者が各地域の医師会に同サービスを紹介し、導入に漕ぎ着ければ、結果として認知症の早期発見、治療の開始につながり、処方に結び付くことが期待できる。モダホスで話を聞いたNTTの担当者によると、エーザイはこのビジネスで報酬を受け取っていないという。


 一方、大塚製薬の「ニュースリリース」コーナーを見ると、“◎◎県と「包括連携協定」を締結”の文言が頻繁に出ている。


 最新の7月13日には、静岡県との連携協定締結について発表しており、▼地域の安全・安心の確保、災害時の支援に関すること▼健康増進、子育て家庭・高齢者・障害のある方への支援に関すること▼子ども・青少年の育成支援、子育て支援に関すること——を含む10項目について、静岡県と連携して取り組んでいくという。


 この連携は、同社のニュートラシューティカルズ関連事業として位置づけられているが、こうした自治体とのパイプは、医薬事業にも役立つだろう。同社によると、都道府県との連携協定は、今回の静岡県を含めて全国で23都府県にも及ぶ。


 2025年に向けて、MRがあまり関与しない医師会や自治体とのコラボレーションが、拡大していきそうだ。


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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。