どこからどう見てもメタボのため、自分の場合、必要な栄養はおそらくない(むしろ積極的に栄養を減らすべきだ)。もちろん、健康食品には「やせる」をイメージさせるものは多々あるが、生来、あきっぽい性格である。大ヒットして、関連商品も多数発売された「ヘルシア」シリーズにハマったのもわずか1ヵ月ほど。1本で取れる茶カテキンの量を見て、「緑茶を少し多めに飲めば同じだ」と、一気にさめた。
とはいうものの仕事上、健康食品に関する記事を手掛けることは多い。下手に持ち上げすぎたりしないよう知識のインプットは不可欠だ。というわけで手に取ったのが、『「健康食品」ウソ・ホント』。
ちなみに一口に「健康食品」と言っても、形や制度上の分類で、さまざまなタイプがある。そのうち国が定めた一定の基準を満たしたのが、保健機能食品で、特定保健用食品(いわゆる「トクホ」)、栄養機能食品、機能性表示食品の3つがある。本書では、それらを中心に「データの扱い」「広告や表示の手法」といった問題点を指摘していく。
一見、科学的根拠らしきデータでも、よくよく読めばおかしなことを言っていることがある。例えば、実験の条件。〈列挙された物質「B」の「機能性」が、どのような実験条件で、どのような量をどれくらいの期間、与えたときに発現するものなのかを冷静に見極める〉必要がある。
著者は出典論文までさかのぼり、徹底的に調査を実施。そして〈都合のいいデータだけを利用し、都合の悪い数値については黙して語らない〉健康食品の実態を指摘する。医薬品の世界では、あり得ない話である。
よくよく読めば、腹部脂肪面積は減少したのに体重が増えていたケースもあるという。
■「海外では医薬品」の危険
新聞やインターネット上で、健康食品の広告を見かけることは日常茶飯事だろう。インターネットの世界では、近年、レクタングル(正方形のもの)、バナー(横長の帯状のもの)などの広告は、かつてほどの人気がなくなったようだが、健康食品に関するものはいまだに隆々としている。
このところ薬機法や景表法の規制も厳しくなったが、それでも見るからに怪しげな広告も珍しくない。著者が〈3点セット〉と呼ぶ〈①キーワードをはずす、②架空「研究会」からの情報発信のかたちをとる、③効果体験談を掲載する〉の3つの手法を巧みに駆使しているのだ。〈なによりも大切なのは、「すぐに飛びつかない」ことです。まずは「○○って、何? そんないいことあるの?」と疑〉う姿勢。本当に「効く」なら、薬になっているはずだ。
商品によっては、海外で医薬品として承認されていることを謳う広告もあるが、〈「国によっては『医薬品』として扱う物質を、『健康食品』として企画も副作用に対する注意喚起もなく使うのは危険ではないか?」と受け止めるべき〉とはもっともな指摘。
仮に、「本当に健康にいい」としても、重大な視点が抜け落ちている。“コスパ”だ。例えば、EPA(イコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)。トクホ飲料だとEPA・DHAが1gあたり349円に対し、イワシの缶詰では1gあたり37円、サンマの缶詰では1gあたり22円だという。
食品関連では毎度同じ結論になってしまい恐縮なのだが、リスクを避けつつ無駄なお金を払わないためには、「適量をバランスよく食べる」に勝るものはなさそうだ。(鎌)
<書籍データ>
高橋久仁子著(講談社900円+税)