今週は各誌とも大型連休直前の合併号。次の号が出るときには、元号は「令和」へと切り替わり、今号は“節目の号”になるわけだが、そのことを最も明確に打ち出したのは、週刊文春だ。毎回、合併号は分厚くなる同誌だが、今回はとくに力の入った記事が並んでいる。


 芸能ネタだけを見ても、『たけし長男怒りの激白 「お父さん、ダサいよ」 愛人&事務所トラブルに新展開』という記事で、離婚が取り沙汰されるビートたけし氏の長男の肉声を報じたほか、「たのきんトリオ」のアイドルとして一世を風靡した田原俊彦氏が四半世紀前、ジャニーズから独立した内幕を『マッチとのケンカ、退職金100万 田原俊彦初告白5時間 「ジャニーさんの僕への興味は20代半ばで終わった」』という記事でたっぷりと本人に語らせている。


 全体のトップには『新天皇を悩ませる秋篠宮さま「即位拒否」 雅子さまの即位拒否』という皇室ネタを据えているが、硬派の記事としてはそれよりも、『創価学会の暗闘 原田続投か谷川新会長か、「ポスト池田」の最終戦争』という「インテリジェンス・レポート」が読ませる。


 ほかにも、林真理子氏の『美智子皇后の奇跡と綻び』という「特別寄稿」や『敗戦と民主主義――令和皇室の危機』と銘打った保阪正康氏と片山杜秀氏の対談、米ポートランド州立大教授ケネス・ルオフ氏による『アメリカ人学者が見た美智子さま、眞子さま』など「特別企画」がいくつもあり、1本ずつの質はさておいても、ぎっしりと重厚な特集号を作ろうとする意気込みは伝わってくる。


 ところが、こうしたいくつもの力作にもましてこの号で衝撃的だったのは、毎度おなじみワイド特集にある小ぶりの記事だった。『木嶋佳苗獄中結婚のお相手は「週刊新潮」デスクだった』。交際した男性3人を次々殺害したとして、すでに死刑判決が確定した現在44歳の女性。事件発覚時、世間の関心は、あまり恵まれているとは言い難い容姿にもかかわらず、次々と男を手玉に取った意外さに集中した。しかもこの木嶋死刑囚、獄中でもわずか3年で2度の結婚と離婚を繰り返し、取材記者として面会したこの新潮のデスク氏が実に3人目の獄中結婚相手となったのだ。


 この男性、40代前半の知的なイケメンということで、文春の取材には、本人も新潮編集部も、取材を目的とした便宜的な結婚ではないことを強調している。木嶋死刑囚については、容姿と犯行のギャップのみならず、何よりも男たちを誘惑しては殺害した犯罪が確定していること、さらに言えば、支援者を通じ公開されているブログに、この期に及んでも面会者の男性的魅力をキャピキャピとはしゃいだ文章で書き続ける“人格的な不気味さ”という点でも、「引き寄せられる男たちの心情」がなかなか腑に落ちない。


 この疑問は当初からこの事件に付きまとっていて、裁判報道でも消化不良のまま終わっていた。この新潮のデスク氏は、その疑問を追求する取材のプロセスで、彼女の女性的魅力を理屈でなく、一男性としてダイレクトに受け止めたわけである。《今後彼女について記事を書くことは基本的にないと思います》。文春の記事ではそうコメントしているが、“色とカネ”にまつわる人の性をメインテーマとする新潮なればこそ、彼自身の深い内面を赤裸々に作品化してほしいと願わずにはいられない。


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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。98年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。07年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って』(ともに東海教育研究所刊)など。最新刊に沖縄県民の潜在意識を探った『国権と島と涙』(朝日新聞出版)がある。