早いもので、8月ももう終わりだ。今年の夏は、レンタカーのハンドルを連日握る環境だったため、下手なパーソナリティーのトークよりよほど楽しめるNHKラジオ『夏休み子ども科学電話相談室』に、はまり込んでしまった。 


 子どもたちの愛くるしい挨拶や、時に意表を突く「素朴な疑問」を聴くだけで十分楽しめるこの番組、実のところコアなリスナーは、科学好きの子どもたちよりも、汚れた心に一服の清涼剤を求める大人たちが中心ではないか、と思ったりもした。 


 あえて番組の問題点を指摘するなら、相談に応じる先生のほとんどに、噛み砕いた表現能力が欠けていることだ。小学1、2年生を相手に「対照的」「生息地」などという漢語表現を使ってしまうために、どう見ても電話を切る子どもの7割は、もやもやとした消化不良感を抱えている。理科にまつわる本質的なことよりも、国語力、ボキャブラリーが壁になり、理解が妨げられてしまうのだ。 


 余計な蘊蓄を語りたがる「先生」も困りものである。「ヒラメの目はなぜ片側に2つあるのか?」という質問そのものには、なかなか答えようとせず、その子どもが見たこともないカレイの話に長々と脱線してしまう。おまけに魚の形状を形容する「右左」という説明がいつの間にか「上下」に変わっている。質問した子どもは明らかに混乱しているのだが、「先生」は得々と“余談”を語り続けるのだ。 


 そうした欠陥もまぁ、「大人向けの癒しの番組」と考えれば、大したことではない。と、無駄話を延々としてしまったが、本題は今週の各誌誌面である。どの編集部もまだ、夏休みの“省エネモード”にあるためか、活きのいいインパクトのある記事は見当たらなかった。 


 主だった特集は、SMAP報道の続報とリオ五輪特集、そして先の内閣改造で沖縄担当相となった鶴保庸介氏の離婚にまつわる報道(ポストのスクープを新潮が後追い)など。かつて野田聖子・自民党総務会長の事実婚パートナーだった鶴保氏はその後、別の女性を妊娠させ、一旦は渋々入籍したものの、男児誕生2ヵ月後に勝手に離婚届を提出、驚くべき冷血漢ぶりを見せた、という話だ。 


 プライベートな話には違いない。だが目下、沖縄問題を中心に取材する身としては、あの島尻安伊子氏を引き継いだ新・沖縄担当相という氏の立場上、人格はかなり重要なポイントであるように思われてならない。「県民に寄り添う」という首相談話の実現には、何よりも誠実さがカギとなるからだ。 


 今週のポストは、何とも独特な紙面構成で、「女性政治家」や「ジジイの有名人」、あるいは「名古屋という土地柄」に焦点を当て、それぞれ別個の記事として「好き・嫌い」の論争的特集を組んでいる(「名古屋嫌い」は前号記事の続報)。何ともぼやっとした話で、果たしてこんな“お題”から話が盛り上がるものだろうか、と心配にもなるが、どうなのだろう。“新機軸”としてこの手の記事を増やすつもりなのだろうか。 


 週刊現代・佐藤優氏のコラムで、遠藤周作『沈黙』が今秋、スコセッシ監督の映画作品として公開されることを知る。遠い昔、原作には深い感銘を受けた記憶があるだけに、見逃すまいと思う。またポストの情報で、佐野眞一氏による唐牛健太郎の評伝が書籍化されたと知る。著者による前触れ記事を見る限り、「なぜ、いま唐牛か」というメッセージが今ひとつ弱い気もするが、かつて沢木耕太郎氏も描こうとしたこの破天荒な人物には、前々から関心があっただけに、こちらも要チェックだと思った。 


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三山喬(みやまたかし) 1961 年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。1998年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取 材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。2007年に帰国後はテーマを 広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って」 (ともに東海教育研究所刊)など。