ファミリーマートとユニーグループ・ホールディングスが経営統合し9月1日、「ユニー・ファミリーマートホールディングス」が発足した。コンビニエンスストア事業の売上高は単純合算で約3兆円となり、コンビニ業界トップのセブン-イレブン・ジャパンには1兆円程度届かないが、店舗数は1万8000店規模となり匹敵する規模に浮上する。しかし巨大化したユニー・ファミマに関係する加盟店や取引先など業界では期待と不安が入り混じっている。


 「統合で規模だけでなく、品質も上げていきたい」。HD傘下の新生「ファミリーマート」の社長に就いた沢田貴司社長はこう第一声を上げた。規模を質に転化する意図を込めた格好だ。


 取引先には店舗の看板や商品のファミマへの一本化が進むにつれ、取引を増やせると踏むところも少なくないとみられる。だが、反面「統合で伊藤忠商事色が強くなるだろうし、これまで以上に規模の論理を振りかざしてくるのではないか」と戦々恐々としている取引先も少なくないようだ。


 というのも、取引先は統合に先立ち明らかになった公正取引委員会によるファミマへの勧告があったばかりだが、そうした動きを警戒しているからだ。


 この問題は本来、下請け業者に支払うべき代金から計6億5000万円をファミマが不当に減額していたもので、公取委は下請法違反と認定し減額分の返還や再発防止を勧告した。統合に水を差す勧告は、公取委が拡大後のユニー・ファミマHDの商慣習に“クギ”を刺したという見方もある。


 公取委によると、ファミマがプライベートブランド(PB)の食品製造の委託を受けていた20社。各店舗が閲覧するカタログ製作品や開店後3日間に売れ残った商品の代金の一部、またセール期間の値引き分などを負担させていたことが下請け代金の減額にあたるとした。


 ある流通業の幹部は「本当に双方が納得できるクリアな取引は少ないのではないか。我われがセールなどをやることで販売が拡大できるメリットが取引先にもある。その際、合意の上で商品代金を減額してもらう交渉はする」と、今回の公取委によるファミマへの勧告の件は「一部の取引先にとって負担感が強いと感じたからではないか」と話す。


 勧告後、しばらくは下請けいじめや優越的地位の乱用などという行為は鳴りを潜めるとみられる。しかし、「それも時間が経てばどうか」(食品卸)という見方もある。さらに「帳合の変更などもあって、一部卸は影響を受けるだろう」(同)と続ける。流通業界では卸の帳合変更は日常茶飯事だが、流通業の規模が大きくなるにつれて、消滅する取引額も大きくなる。


 例えばセブン-イレブン・ジャパンでは、今年、取引先食品卸として長年取引があり取引額も大きい伊藤忠食品の取引を大幅に変更した。伊藤忠食品がセブン-イレブンから失った取引額は数百億円規模に上るとされている。


 伊藤忠食品としては大打撃。伊藤忠食品は規模が大きいから経営が揺らぐまでにはならない。だが、これが中小の納入業者だったら、経営を左右しかねない事態に発展するところだ。


 業界ではセブンによる伊藤忠食品の帳合変更について当然ながら、「ファミマがサークルKサンクスを傘下に持つユニーグループと経営統合したことが引き金になっているのではないか」とウワサされている。


 今回のファミマとユニーグループの統合ではユニーグループと取引のある卸など納入業者が、ファミマ系の納入業者に一本化されることで取引を切られるのではないかとみられている。しばらく、経営統合が安定するまで水面下で取引関係をめぐる変動が続くことが予想されている。


 一方、看板替えが行われるサークルKサンクスの加盟店にとっても穏やかではなさそうだ。すでにサークルKサンクスの1000店を閉鎖すると発表しているし、ファミマ加盟店との加盟条件格差の調整という難題もある。しかし、最大の問題は日販差をどう埋めるかという問題。


 コンビニ業界の平均日販(1店あたり1日の売上高)はセブンが65万円とトップで次いでローソンの53万円、ファミマ51万円と続いて、一段下がったところにサークルKサンクスの43万円という順位となっている。


 統合後、当分の間は旧サークルKサンクスの平均日販の改善がテーマになるとみられ、店舗を巡回指導して加盟店を支援する要員は「日販を上げるように」という厳命が下るに違いない。どちらかというと、これまで牧歌的にやってきたサークルKサンクスの加盟店には売り上げ向上という試練が待ち受けている。


 ファミマの看板に付け替えただけで売り上げが増える訳もなく、相当な販売努力が求められる。発注を多くして品切れによる販売機会の損失をなくすようになどという従来のサークルKサンクス本部とはまた違った積極的な指導が行われる可能性は高い。


 統合される側が統合する側に付き従う。これは企業統合の常。種々課題をクリアして沢田ファミマ社長の第一声のように、規模を質に転化できるか。それがユニー・ファミマHDの最大の焦点となりそうだ。(原)