サークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングスとファミリーマートの経営統合で、再編も最終章を迎えたかにみえるコンビニエンスストア業界。ところが、中堅中小コンビニもしたたかに生き残り策を模索している。中堅中小チェーンは再編に飲み込まれず、生き残ることができるのか——。


「ファミマ」ブランドに一本化されるサークルKのおひざ元、愛知県。さすがに、サークルKの親会社だったユニー発祥の地だけあって、サークルKの今年7月末現在の店舗数は約1200店と都道府県別では一番の店舗数がある。この愛知県のコンビニ業界が最近、ざわついている。


 というのも、サークルKの店舗が大量にデイリーヤマザキに鞍替えするという椿事が発生しているからだ。実数こそ、明らかではないがファミマへの看板替えを嫌ったり、逆にファミマ側から弾かれたりして「結構な数がデイリーに駆け込んでいる」(あるコンビニ幹部)ようだ。


 デイリーといえばご存知、製パン大手の山崎製パンの100%子会社。山パンの生産体制やデリバリー体制を最大限に生かした店舗展開で知られている。


 デイリーの店舗は全国に約1500店、「ミニストップと並んで大手の草刈り場の最有力候補」(同)と揶揄されているほど、ここ数年、店舗網は縮小傾向だし、大手3社に大きく水を開けられ、停滞感は否めないところだ。


 そのデイリーがサークルK脱退組の受け皿になっているのはなぜか。あるコンビニ幹部は話す。「ゆるーい加盟条件が受けているのではないか」とみる。例えばデイリーには「ニューデイリーヤマザキ」という新型店があるが、こちらはコンビニで一般的な24時間営業ではない。営業時間は16時間以上(午前7時から午後11時までを含む)となっている。しかも建前では「原則年中無休」となっているが、「ローカルルールで日曜日に閉めていたりする店もあるようだ」とされている。


 さらにいえば、通常コンビニは、夫婦や家族などオーナーとパートナーの2人を加盟条件にしているところが多い。が、デイリーでは1人専従タイプの加盟条件もあり、加盟は比較的広き門だ。こうした条件を引っ提げて、デイリーの担当者がサークルK加盟店に猛チャージをかけているというのだ。


 何しろ、サークルKではファミマへの看板替えにあたって、既存店1000店を閉鎖(脱退や、置き換えなどを含む)する方針を明らかにしており、中堅中小チェーンはこの落穂拾いの絶好の機会。オーナーの高齢化が進むコンビニ業界にあって、サークルK加盟店のなかでも、ファミマ統合を機に廃業を考えるオーナー、また、まだやりたいけどファミマ側に弾かれている加盟店などに対し、緩い条件を提示して、加入を誘っているとされている訳だ。大手コンビニチェーンでは絶対あり得ない、営業時間など運営の弾力化を示して取り込みを狙っている。


 まさに、サークルKの本拠地である名古屋は中堅中小コンビニにとって熱い戦いの場になっている。大手食品卸の国分グループ本社傘下でコンビニ、「コミュニティ・ストア」を運営する国分グローサーズチェーンも落穂拾い参戦組のようだ。


 同社は今年9月下旬、名古屋市に新型のコンビニを開いた。同社は東名阪に約520店を展開している。ただ、サークルKの店舗が多い名古屋には店舗も少なく、何とか攻略したい地域であるのは確か。そのため、ここで新型店を開くのはやはり、サークルKからの鞍替えを狙っているとみて間違いないだろう。


 新型店「コミュニティ・ストア名古屋北清水三丁目店」の店舗面積は約400㎡と一般的なコンビニの約2倍。売り場部分には店内調理の総菜を量り売りなどという、まさに食品スーパーのお株を奪うような取り組みがあるが、売りものはコインランドリーを併設することだ。


 11月中旬に店舗に併設する格好のコインランドリーは最近、郊外のコンビニ跡地などに増加しており、家庭の洗濯機ではなかなかできない、布団や毛布の大物の洗濯もできるような大型の機器があり、支持されて始めている。そんな隙間の市場を狙って、コンビニとしては珍しいコインランドリー設置に踏み切った。


 コインランドリーは、ガチガチの標準化で多店舗展開する大手のコンビニではなかなか取り組みにくいサービスのひとつとみられ、その間隙を縫う格好だ。


 ローソンと資本業務提携しているポプラ(広島)は食品自販機の実験を10月に始める。おにぎりやサンドイッチ、飲料、カップ麺などを収納した自動販売機はファミマが先行しているが、工場や病院、オフィスなど閉鎖商圏の配置することで、やはり隙間市場を狙っていく戦略だ。


 中堅中小のチェーンは大手と同じ土俵に上がっては勝てないのは自明の理。「緩さ」「小回り」「隙間」が生き残りのキーワードになるかもしれない。(原)