昔から何冊もの“睡眠本”が刊行されてきた。眠りを科学したり、グッズを紹介したり、音楽を聞かせたりと、切り口はさまざま。それだけ、睡眠不足を抱えていたり、眠りの質に不満を持ったりする人が多いのだろう。


 数々の睡眠本が書店に並ぶなか、今の売れ筋ナンバーワンが『一流の睡眠』だ。仕事柄、多くの睡眠本を読んできたのだが、わかってはいても実行が難しい。著者同様、〈そんな毎日は、ビジネスパーソンの究極の理想形かもしれません。/しかし、実際にそんな生活ができている人が、どれだけいるでしょうか?〉と感じていた。


 その点、著者の裴英洙氏は、医師でありながら、MBAホルダーでコンサルタント。忙しいビジネスパーソンの仕事や日常に即したアドバイスを送る。


 例えば、仕事中の「寝落ち」。本書では、「マイクロスリープ」という呼び方も紹介されているが、つまらない会議などで、誰もがカクンとなる経験したことがあるだろう。〈周囲からは、だらしなく見えたり、ちょっと微笑ましく見えたりしますが、実際は自分の体が危険信号を発している〉という。


 マイクロスリープが頻発する人は、睡眠不足が続いている危険性がある。〈仕事の調整を試みなさいというサイン〉と認識したほうがよい。


■「ここ一番の徹夜」への対処法


 ビジネスパーソンなら、どんなに仕事をコントロールしたつもりでも、突発的なトラブルや重要プロジェクトの最終局面で、「ここ一番の徹夜」が発生することがあるはずだ。


 医師だけに〈徹夜続きは、文字通り、医学的には「百害あって一利なし」の行動〉とはいうものの、〈長いビジネス人生を、一度も徹夜せずに乗り切れというのも、現実的な話ではありません〉と事情は察してくれる。


 そのうえで、①徹夜明けは単純作業、②15〜20分の仮眠をとるが、ベッドはNG(これは自分も実践している)、③昼休みに仮眠、④徹夜明けの夜は十分な睡眠、といった〈どうしても徹夜せざるをえない時〉の対処法を伝授する。


 ほかにも、時差のある国への出張、酒にはチェーサーを、〆のラーメン、コーヒーの飲み方……等々、ビジネスパーソンに不可欠なノウハウ満載だが、ぜひ実践してみたいと思ったのが、〈翌日のパフォーマンスを最大化するためには、就寝時間を「1日のスタート」とするべき〉という考え方。


 布団に入ると「やれやれ1日もようやく終わり」と気がゆるむこともあって、スマホやタブレットで、ついネットサーフィンしてしまうという人は少なくないだろう。自分の場合も、「なんだかんだで30分すぎてしまった」ということが多い。30分を積み重ねると、〈休日を除いた1ヵ月でおよそ10時間。寝る前の30分のネットサーフィンを1ヵ月やめるだけで、1日分の労働時間が確保できる計算〉だ。


 確かに……。自分が「一流」ではない理由が見えてきた。(鎌) 


<書籍データ>

『一流の睡眠』

裴英洙著(ダイヤモンド社1400円+税)