医薬品業界には「地域包括ケア」という言葉が浸透し、その対応が叫ばれているが、地域包括ケアよりも先に課題となるのが、「地域医療構想」への対応だろう。      

                                           
 地域医療構想で怖いのは“病床再編”だ。2025年時の必要病床数の推計とは、一般病床が15.7〜19.7万床、高度急性期と急性期病床は24.1万床ものギャップがある。つまり、このギャップの分だけ削減される可能性があるということだ。逆に足りないのは回復期と在宅医療である。


 日本病院団体協議会の調査によると、2018年度の“ダブル改定”までに2割強の病院が、7対1から他の病棟への変更を検討しているという(すでに転換している病院含む)。18年度の改定は、地域医療構想を実現しやすくするために、さらなる7対1入院基本料の厳格化(在宅復帰率の強化など)と地域包括ケア病棟及び回復期病棟への転換にインセンティブ(おいしい)をつけることになるだろう。


 こうした病院経営環境の変化は、勤務医などへのプレッシャーにもつながり、結果として面談効率の低下に拍車をかけることになる。そのため、今から病院との関係を強化しておく必要がある。


 自社製品のことばかりを話すMRが医師に会えなくなるのは言うまでもないが、地域医療構想や病院経営のことばかり話して、例えば連携をサポートしたとしても、結果として処方に結びつかなければ意味がない。そのことが、地域医療構想への対応を推奨した本社へのバッシングにつながる可能性もある。


 そうならないためには、図のように、第1層:1人の患者に対するソリューション、第2層:各医師・診療科・薬剤部のニーズ、第3層:病院の戦略・ビジョン(この層が地域医療構想に関連)、第4層:地域の課題とニーズ(この層が地域包括ケアに関連)——の4層をすべてフォローするような活動が求められる。あなたの製品が、目の前の患者(第1章)に、医師等のニーズ(第2層)に、病院の戦略(第3層)に、地域の課題解決(第4層)に、それぞれどのように貢献できるのか。

 このことが説明できないと、変化する病院との関係強化は難しい。

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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。