週刊現代が文春への反撃を始めた。ひとつは、一連の医療問題企画に関連して、富家孝氏と南淵明宏氏という2人の医師による計4ページの対談を載せ、《なぜ無駄な薬が処方され続け、危ない手術がなくならないのか?》という観点から、同誌のキャンペーンに《大きな意義があった》と高評価を与える“自賛記事”である。


 両人の口から具体的に語られてはいないが、『週刊現代の医療特集は、間違っていません』というタイトルの付け方は、明らかに過去、現代のキャンペーンに批判記事を書いてきた週刊文春に向けたものだ。


 現代は同じ号の6ページのスクープ記事においても、文春を批判している。この記事は『高畑裕太「レイプ事件」被害者女性の初告白』と銘打って、これまでメディア取材に応じて来なかった被害女性の3時間に及ぶインタビューをまとめたものだ。記事そのものは渦中の人物の独占インタビューという真っ当なクリーンヒットであり、たまたま被害女性が文春への遺恨を持っていて、記事のトーンにもそれが映し出されている。


 9月に文春に出た事件の詳報が、被害女性にも行為への合意があった、と受け取れる内容だったため、彼女はそれに反論するために現代の取材に応じたのだ。女性の証言を受け、編集部サイドも『週刊文春の記事はおかしい』と小見出しをつけている。現代は次号にも続報を載せ、文春が指摘した“美人局疑惑”について反論する予定だという。


 一方、今週は週刊ポストも『間違いだらけの「豊洲移転報道」新聞・テレビ「誤報リスト」全一覧』と題した記事を載せ、メディア全般への批判を繰り広げている。具体的には、広角撮影した歪んだ写真をもとに市場内の建物の柱が傾いていると誤認したり(フジ)、鮮魚を運ぶカートが角を曲がれない、とされた設計上の批判が事実ではないことが判明したり(テレ朝)、地下空間から「微量のベンゼンが検出された」という記事が誤報だったとして訂正されたり(東京新聞)と、各メディアで相次ぐずさんな報道に警鐘を鳴らすものだ。


 現代による高畑事件報道への批判に話を戻せば、文春は先週、新潮から批判された宮崎緑氏の経歴疑惑報道に続いて、今週もライバル誌から“ケチをつけられた形”だ。年明け以来、「センテンススプリング」「文春砲」などと、その破壊力が注目されてきた文春だが、実は春先には、そのあまりに突出した“爆走ぶり”に社内からも「大丈夫か」と不安を漏らす声が上がっていた。


 持ち上げられすぎると、“つまずいた時”の叩かれ方も激しくなる。常々“叩く側”にいて、そんな世の常を熟知する彼らだけに、“無敵の快進撃”もいつまでも続くものではない、と自らを戒めていたのである。


 とは言っても、現実には文春の取材力はまだまだ他を圧している。今週も、山本農水相の事務所が秘書を酷使する“ブラック事務所”だと告発する記事や、慶応大サークル・集団強姦事件の続報、プロ棋士が対局中スマホで将棋ソフトを“カンニング”した疑惑の詳報など、相変わらず充実した誌面を作っている。ただ、その“つまずき”を業界のライバル、もしくは文春に遺恨を持つ人たちが虎視眈々と狙っていることも、彼ら自身が警戒する通りだろう。


 一般読者として見れば、メディアの相互批判は、それはそれで面白い読み物であり、結構なことである。願わくは週刊誌全体がもう一段パワーアップして、誌面全体の充実ぶりにおいても、追いつき追い越せで競い合ってくれれば、なお好ましいと思う。 


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三山喬(みやまたかし) 1961 年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。1998年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取 材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。2007年に帰国後はテーマを 広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って」 (ともに東海教育研究所刊)など。