関西スーパーと阪神阪急百貨店などを擁するエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)の電撃的な資本・業務提携によって、関西スーパーの大株主となっている首都圏地盤のディスカウント型食品スーパーのオーケーがどう動くか——。


 9月になって、突如オーケーが関西スーパーの発行済み株式を大量に保有していることが明らかになったが、これを嫌うように、関西スーパーは10月、H2Oと電撃的な提携。オーケーの一方的なラブコールは無視され、それどころか、関西スーパーの第三者割当増資でオーケーの持ち株比率は希薄化、コケにされた格好になっている。しかし、「これで終わりそうにない」(大手スーパー幹部)という見方が有力だ。


 事の発端は9月1日。オーケーが関東財務局に提出した大量保有報告書で関西スーパーの発行済み株式の5.60%を取得したがことが判明したことだ。しかも翌2日には、保有比率が8.04%となったことも明らかになっている。オーケーは取引先持株会に次ぐ大株主となっており、着々と買い増しを進めていた格好だ。


 オーケーが突然、大株主に浮上したことに戸惑ったのは関西スーパーだろう。業界では、創業者である北野祐次氏が2013年に死去して以降「関スパ買収の噂が絶えなかった」(食品スーパー幹部)と言われるが、株式の取得から入るというやり方は、あまりにも唐突で強引だからだ。しかし、関西スーパーの動きは早かった。オーケーが大株主になったことが判明してから2ヵ月。10月下旬にはH2Oとの資本業務提携をまとめた。


「オーケーはそれまでに、関西スーパーに資本・業務提携を提案していたのではないか」とみられている。実際、オーケーは関西スーパーの大量保有報告書の株式保有目的に「重要な提案を行うこと」と明記しており、大株主としての立場から提携の提案をしていたのはほぼ間違いない。


「三菱商事が後ろで糸を引いているとは到底思えない」と話すのは、ある投資ファンド幹部だ。


 実はオーケーについては現在、三菱商事が4.6%、三菱食品が5.3%の株式を保有しており、商事とグループ企業の計2社で約10%の大株主となっている。そのため一部で「オーケーのバックについている三菱商事が、ライフコーポレーションやオーケーを核にした食品スーパー連合の形成に動き出したのか」という見方もあった。だが、三菱商事のこれまでの流通戦略で、そうした強引な手口で買収なり提携したケースはほとんどない。


 では一体なぜ、オーケーが関西スーパーの株式を取得したのか。


 オーケーは首都圏地盤のディスカウント型のスーパーで、関西スーパーは社名の通り、関西が地盤の生鮮食品を強化した一般的な食品スーパー。両社の地盤は地続きではなく、ドミナント(地域集中出店)体制を築くことで効率が上がる流通の原理原則から外れる。


 しかし、考えられる動機については、関西進出の足掛かりにしたかったことが指摘できそうだ。オーケー創業者で、セコムの飯田亮氏などを兄弟に持つ飯田勧氏の最後の大仕事のひとつとして、関西スーパー株を取得し大阪に進出、規模拡大の大勝負に打って出たと言えそうだ。


 例えば食品スーパー大手のライフコーポレーション。同社は関東と関西で同時に店舗網を拡大し、現在の5000億円近い売上高を獲得、食品スーパー大手の地位を確立している。オーケーと同じように三菱商事と提携し、社長も三菱商事から受け入れている。


 食品スーパーの場合、必ずしも地続きではなくても、仕入れ面での規模の利益が働くし、生鮮食品の場合などはむしろ、量をまとめて仕入れると生鮮食品の相場形成に影響を与え、デメリットも発生するというから、オーケーが東西2拠点体制を構想したことは十分に考えられるのだ。


 実際、オーケーは飛び地ながら宮城・仙台にも店舗を持っている。おそらく、地域が離れていても構わないのだろう。


 さらに言えば飯田勧氏も、すでに90歳近い高齢。今年6月に三菱商事出身の二宮涼太郎氏に社長の席も譲っており、新体制の下で今後5年間、2021年までに現在の売上高である3074億円(16年3月期)を6000億円までに拡大する計画も打ち出している。


 計画にM&Aは含まず、「借入なしで年率30%の成長」の方針を掲げている。17年3月期に10店の新店、18年3月期に15店、19年3月期に17店、20年3月期に20店という大量出店し、年率20%成長を確保するとしている。


 ただ、これだけでは30%の成長ができないとみられるので、出店で成長できないところをM&Aで補完する考えかもしれない。つまりその標的が関西スーパーになった格好だ。


 しかし、関西スーパーはオーケーの秋波を蹴ってH2Oとの縁談をまとめており、しかも株式の希薄化でオーケーが8%以上を取得した意味も失う。オーケーは今のところ完全にコケにされた格好だ。だが、このままおめおめと引き下がると思えない。


 オーケーでは「引き続き協議を進めていく」と話しているという。巻き返し策としては株式の買い増し、株主提案、委任状争奪戦などが考えられるが、果たしてどう出るか。オーケー、関西スーパーからは当面目が離せない。(原)