優れた製薬企業のホームページとして高い評価を得ている「Pfizer PRO」は、医療関係者の“〇〇したい”をサポートするように設計されているそうだ。


 ファイザーのグローバル・コマーシャル・オペレーションの渡辺規子氏は11月12日に都内で開催されたJASDIフォーラム『製薬企業ホームページの未来を語る』——なぜ欲しい情報が手に入らないのか、パスワードは本当に必要なのか——の中で講演し、「医師は複数のチャネルを並行して能動的に情報収集を行っており、とくに近年ではMRやリアル講演会の利用率が減少している一方、デジタルからの情報収集の割合が高まっている」と指摘した。


 そのため、Pfizer PROでは、


①医療に役立つ最新情報を手に入れたい


②オピニオンリーダーの講演を聴きたい


③有名ジャーナルの内容を確認したい


④製品に関する疑問に答えて欲しい


という4つのニーズに応えるようなサイト作りをしているという。④については、リモートディテーリング(電話とパソコンを利用したディテーリングサービス)システム「Pfizer PRO CONNECT」により、最短5分で専任MRとの通話が可能となっている。


 さらに、患者さん用資材を指定の住所に届ける「資材宅急便」や後発医薬品の剤形写真、若手医師向けには初期研修の修得率アップをサポートするコンテンツを充実させているという。


 今回のフォーラムでは、“標準化”がキーワードになっていた。ほかの演者が「製品情報すら表示の仕方・並び方がバラバラ」と指摘するなか、渡辺氏は、「何が正解なのかわからない。製品情報の見せ方を標準化したときに、果たしてその標準化されたものが医療関係者に満足してもらえるのか。標準化したことで、改善する動きが滞ってしまうのではないかという懸念もある」と語り、標準化することの副作用も意識する必要があることを示唆した。


 “Next Step”について渡辺氏は「個別化」をキーワードに掲げた。


「これまではMRが医療関係者との主なタッチポイントだったが、これからデジタルがMRに勝る勢いで代替する時代になっていく。今後は、“〇〇したい”を一歩超えて、医療関係者が片づけたい用事を早く確実に片づけられることをサポートし、顧客体験を上げていくことを意識している。しかし、あまりにもニーズが多様化するので、Googleのトップページのようにすることも個人的には考えている」


 総合討論の際に、現役のMRから出た質問が面白かった。渡辺氏が講演中に紹介した「MR訪問後にネットを確認する医師の割合56%」というデータに対し、「MRに信用がないから自分で調べたのか? 補足資料がほしいのか? どうなのでしょう?」という質問に渡辺氏は、「MRと話して興味を持ったので、幅広い情報をみてみようと思うようです」とやさしく答えていた。もし、この質問をしたMRが、この記事を読んでいたら、ぜひ、本コーナーで過去に書いた「ASICTUSの法則」を読んでほしい。

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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。