最近の講演で必ず紹介する“病床機能報告制度を活用して薬局長の信頼を獲得したD社のMR”は、その後、残念ながら転勤になってしまったそうだ。


 後任のMRは、前任と同じようなアプローチができるだろうか。薬局長にとっては、残念な担当変更だったに違いない。


 しかし、「遠隔ディテーリング」が可能になれば、この重要な薬局長だけは引き続き同じMRが担当することが可能になるかもしれない。出張などでリアルに面会できる機会があれば、あとは遠隔からディテーリングを行えばいい。そうすれば、担当変更で得意先が落胆することも少なくなるだろう。


 この話は、11月26日に弊社東京第一スタジオで開催した第3回MBA(メディカルブレーンアソシエイト)交流会『知恵の輪クラブ』〜MRのための遠隔医療基礎知識〜終了後の懇親会で、現役のMRがつぶやいた言葉から思いついたものだ。


 遠隔ディテーリングについては、前々回に紹介したPfizer PROに搭載されているほか、旧セジデムの社長を務めたマーティ・ロバーツさんのエンタッチ株式会社がサービスを提供している。こうした遠隔ディテーリングがブレイクするきっかけとなるのは、もしかしたら、“遠隔診療”市場の拡大なのかもしれない。


 26日の「知恵の輪クラブ」では、株式会社メドレー CLINICS事業部マーケティング統括の田中大介さんから遠隔診療の“現状”が明らかにされた。


 同社ではすでに約200医療機関と契約している。診療科別では内科が最も多いのはそもそも数が多いから当たり前だが、精神科、皮膚科、耳鼻科などで2位を争っているそうだ。他にも「自由診療との相性が抜群」で、ピルやEDなど、通院するのが面倒くさい領域では患者数の増加に寄与している。


 遠隔診療は15年8月10日付で出された通知「情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について」により、“実質解禁”された。さらに、11月10日の未来投資会議で安倍首相が遠隔診療に言及したことにより、18年度の診療報酬改定において遠隔診療を後押しする点数設計がなされることが期待されている。


 田中さんによると、「昼休み」や「診療時間後」というMRにとっての“ゴールデンタイム”に遠隔診療に取り組むクリニックが多いという。18年度に遠隔診療大ブームを迎えたら、MR側も遠隔ディテーリングなどで対抗しなければ、ますます医師に会えなくなるかもしれない。遠隔診療になれている医師なら、遠隔ディテーリングも受け入れやすいだろう。 


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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。