最近の製薬企業向けの講演では、ドナルド ・トランプ次期米国大統領の「We are going to make America great again!」(我われがアメリカを再び偉大にする!)というキャッチフレーズを真似て「We’re gonna take the MR’s confidence back!!!」(我われがMRの信頼と自信を取り戻す!!!)と参加者に投げかけている。英語からだいぶ離れているので、文法を間違えていたら申し訳ない。


「confidence」には、「自信」と「信頼」という意味がある。どちらも今のMRが取り戻さなければならないものだ。業界誌のアンケート調査では、悩みや不安に「存在価値」を挙げるMRが最も多い。そんな職種がほかにあるだろうか。大工さんが存在価値に悩んでいるという話を聞いたことがない。


 MRと同じくらい“不要論”が叫ばれる職種に「(薬局)薬剤師」がある。なぜ、MRと薬剤師がバッシングを受けるのか。共通点として考えられるのは、3つの“触れない”が共通点としてあることだった。


 それは▼身体▼生活▼思い——の3つである。医療・介護の世界で働く専門職種にとって、この3つに触れないのは致命的だ。


 この考えを数年前から発信していたら、薬剤師界では、バイタルサイン講習会などで研鑽を重ね、患者に触れる薬剤師が増えてきた。一方、MRと薬剤師以外にも不要論を指摘される職種が出てきた。


 ケアマネジャーである。要介護者やその家族の「生活」や「思い」に寄り添っているはずの職種が、なぜ、不要論を叫ばれるのか。


 厚生労働省の「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会」がまとめた“中間的な整理”には、「利用者像や課題に応じた適切なアセスメント(課題把握)が必ずしも十分でない」「ケアマネジメントにおけるモニタリング、評価が必ずしも十分でない」など、検討すべき項目が数多く掲げられた。


 つまり、「生活」や「思い」にあまり触れていなかったというわけだ。MR、薬剤師、ケアマネジャーいずれも“質の向上”が目指されているが、質の向上のキーワードとなるのは、やはり、「生活」や「思い」に深く触れることではないだろうか。 


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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。