米国のインターネット新聞ハフィントンポストは12月17日、精神科医がオバマ現大統領への書簡という形でトランプ氏への懸念を示したことを伝えた。 


◆3人の精神科医が現大統領に直訴


 書簡を送ったのは、Judith Herman(ハーバード大学精神医学教授)、Nanette Gartrell(元UCSF精神医学臨床准教授)、Dee Mosbacher(元UCSF地域保健システム臨床准教授)の3氏で、トランプ氏が自己愛性人格障害(Narcissistic Personality Disorder; NPD)である可能性を疑っているとのこと。


 記者が許可を得て公開した11月29日付の書簡によると、彼女らは、「誇大性、衝動性、自分への侮辱や批判に対する過敏な反応や、幻想と現実を区別できない点で、大きな権限をもつ米国大統領行政府の長としての資質には疑問を感じざるを得ない」。そこで、「公平中立的な立場の調査チームによって、同氏の医学的・精神神経学的精査を行うことを強くお勧めする」というのだ。


 さらに記者は、「自分が取材した精神医学の専門家たちは皆、トランプ氏がNSDの診断基準に当てはまると100%確信していた」と述べている。 


自己愛性人格障害の診断基準に照らすと


 NSDは誇大的な自己イメージを抱き、自己評価に過度の関心を払うパーソナリティで、(空想または行動における)誇大性、賞賛されたい欲求、共感の欠如などが成人期早期までにみられ、さまざまな状況であらわになる。米国精神医学会(APA)のDSM-5では、人格障害のクラスターB(感情的に不安定な群)に分類され、以下9項目中5項目以上の該当によって診断される。


  1. 自分が重要であるという誇大な感覚(例:業績や才能を誇張する、十分な業績がないにもかかわらず優れていると認められることを期待する)
  2. 限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛といった空想にとらわれている
  3. 自分が“特別”で、唯一無二の存在であり、他の特別なまたは地位の高い人たち(または団体)だけに理解される、またはそうした人たちだけと付き合うべきだ、と信じている
  4. 過剰な賞賛を求める
  5. 特権意識(特別有利な取り計らい、または自分の期待に相手が自動的に従うことを理由もなく期待する)
  6. 対人関係で相手を不当に利用する(自分自身の目的を達成するために他人を利用する)
  7. 共感性の欠如:他人の気持ちや欲求を認識しよう、または気づこうとする意志がない
  8. しばしば他人に嫉妬する、または他人が自分に嫉妬していると思い込む
  9. 尊大で傲慢な行動、または態度を示す 


医学会、一般の人の反応は


 このニュースに対して読者からは、最初の2日間だけで850以上の反応があり、その内容は「同感だ。よくぞ言ってくれた」、「トランプ氏を精査する権限がない現大統領に書簡を送るなんてちょっとおかしいんじゃないの?」、「憎しみや怒りで一杯の米国民は、自分の姿をトランプの中に見ているんだと思う」などさまざまだった。一方、APA会長は、当選の翌日にはトランプ氏に緊急メッセージを送り、精神医学分野の政策への理解と協力を求めたという。


  1月20日の次期大統領就任式まで、あとわずか。米国にとって文字通りtrump(切り札、最後の手段)になるのか、世界がこわさ半分、期待半分で見守っている(玲)。