地域包括ケア病棟が予想以上に増え続けている。地域包括ケア病棟協会が2016年11月17日に行った記者会見によると、同年11月時点の届出数は1723病院(推定病床数は5万3600床)だという。2015年7月時点の1244病院(厚生労働省調べ)から1年半未満で約500病院も増えたことになる。


 政府の調査会がまとめた2025年の必要病床数によると、▼一般病床は15.7〜19.7万床過剰▼高度急性期と急性期は24.1万床過剰▼逆に足りないのは回復期と在宅医療——という状況だった。


 そのため、▼DPC病床の3分の1は撤退▼急性期→地域包括ケア病棟への再編▼病床過剰地域の病床減——が起きることになる。この流れの中で、地域包括ケア病棟への届出が増えているのだろう。


 前回も触れた“Judgement Year”(審判の年)となる2018年度以降、医療機関や薬局は、地域全体を「よいアウトカムを出し続けるヘルスケア共同体」として認識したうえでエリア・マーケティング戦略を構築していく必要がある。もちろん、そのメンバーに製薬企業と医薬品卸が入る気がなければ、地域包括ケアという“免疫システム”から排除されることになってしまう。


「よいアウトカムを出し続けるヘルスケア共同体」を映画の基本である三幕構成「はじめ」「中」「おわり」に例えるならば、これまでは自院である「中」のマネジメントを中心としてきたが、これからは「中」に加えて、自院に受診する前の「はじめ」と退院・転院先の「おわり」にも意識を向けた戦略が求められる。もちろん、今後の地域の人口構造の変化に合わせて、「はじめ」「中」「おわり」を変化させていかなければならない。


 製薬企業や医薬品卸は、こうした変化を把握するために、▼地域医療構想の動きの把握▼疾患ごとの患者の流れの把握▼連携ネットワークの把握及び関係強化——を意識した活動に時間をかける必要があるだろう。


 MRやMSも、「中」だかでなく「はじめ」や「おわり」も意識していこう。 


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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。