フェイクニュース vsファクトチェック

 朝の通勤電車で紙の新聞に目を通す姿を見る機会はぐっと減った。学生、社会人を問わず、スマホを覗き込んでなにかしら見ている(している)人がほとんどだからだ。ところが、いかにも「使いこなしている」感がある若者が、情報の真偽をきちんと吟味しているとは限らない。 

◆“Fukushima Daiichi”近くの花?

 Wall Street Journalは2016年11月21日付の記事で、中高生のメディアリテラシーを調べたSam Wineburg教授(スタンフォード大学教育学)の研究について報じている。教授が中高生7,804人を対象に行った調査では、中学生の約82%が記事体広告(sponsored content)と本当の記事の区別がつけられなかった。また、「福島原子力発電所付近に生えた花」というキャプションとともに、中央部がニ分裂したヒナギクの画像を写真共有サイトに載せたところ、高校生の約40%が鵜呑みにしたという。

 米国では中学生が学校外で1日7.5時間ネット接続しているとの調査もあるとのこと。上述の記事では、別の教育コンサルタントのコメントとして、早期(小学生くらい)から健全な懐疑感(healthy skepticism)を育てられるよう、親子でニュースについて話し合う機会をもつことを勧めている。

 日本では、平成21年4月に「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(青少年インターネット環境整備法)」が施行されたが、その視点はモラルの問題やネットを介した犯罪の予防に向けられてきており、情報の見極めはまた別の課題といえる。 

作為、誤報、否定

 では、大人が情報の真偽を見極められるかとなると、かなりあやしい状況になってきた。その背景にはやはりSNSの普及がある。トランプ氏は大統領就任前の初記者会見でCNNを“You are fake news.”と、こき下ろした。Twitter攻勢も相変わらずだ。「こうした状況を受けて」と明言しているわけではないが、英国BBCは2016年8月から開始していた“Reality Check”(fake newsかどうかを検証し公開する試み)を強化した。英国の公共テレビ局Cannel4も同様の趣旨で“Fact Check”に取り組むという。

 BBCのAmol Rajan氏(Media editor)は、「公共放送に関わる者として中立公正でなければならないが、現状は看過できない」としてfake newsの問題点について論じている。

 同氏によると fake news は3つに分類できる。

 ひとつは、利益を得るために巧妙につくられた偽情報(false information)。

 2番目は、ジャーナリストが自分でも気づかずに行ってしまう誤報(false news)で、メディアに対する信頼を失う原因になる。

 そして、3番目がトランプ氏のように、自分を不快にする報道を“偽ニュース”と決めつけ否定するもの。これは「民主主義への脅威だ」と同氏は述べている。 

 ワシントンD.C.で米国議会の白亜の建物が見渡せる場所に、ニュージアム(Newseum)という博物館がある。ニュースとジャーナリズムをテーマに、報道の過去・現在・未来を知ることができる楽しい場所だ。館内には世界各国を、報道の自由がある(緑)、部分的にある(黄)、ない(赤)に色分けした地図の展示コーナーもあるが、本家本元の米国が赤に変わることがないように願いたいものだ。(玲)