ハートランドウイルス
from『インハンド』(TBSテレビ、2019年4月19日放送)
さまざまなメディアで日々使われ、一般のひとの耳・目に入るコトバから、気になるものを取り上げる。今回は、右手がロボットハンドの義手で、「寄生虫学が専門だが医学・生物学全般に秀でた天才科学者」紐倉哲(ひもくら・てつ)を主人公とする金曜ドラマから。
◆マニアックなテーマがめだつ
毎クール2~3本はある医療ドラマ。切り口が出尽くしたのか、2019年4月期は、放射線科や画像診断を扱う『ラジエーションハウス』、寄生虫学を盛り込んだ『インハンド』と、漫画を原作とするマニアックなテーマが並んだ。
『インハンド』第2話で登場したのは、実在の日本未上陸ウイルス。米国ミズーリ州北西部にあるHeartland Regional Medical Centerの Dr. Scott Folkが発見したものだ。
米国内の報告では2009~2017年に14例が感染、2例が死亡。ミズーリの他、アーカンソー、インディアナ、オクラホマ、テネシーなど中西部の州で5~9月にダニにさされたケースが多い。
症状は、38℃超の発熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛、食欲不振、嘔気、下痢、体重減少、関節痛、白血球減少、血小板減少、肝機能検査値異常など、あまり特異的ではない。最初の2例では、記憶障害もしばらく続いたが、その後ゆっくり回復したという。治療は対症療法のみ。
◆忘れた頃にやってくる新興・再興感染症
ドラマは、ハートランドウイルスが致死性の強いものに変異、なおかつ、あるイヌ好きの少年が、多くの人に感染をもたらす無症候性キャリア(スーパースプレッダー)になったという「設定」だった。
感染症パニックは忘れた頃にやってくる。
筆者も個人レベルで振り回された記憶がある。SARSの流行で高校生だったムスメの修学旅行先が変更になった、新型インフルエンザ流行の年には海外出張直前に微妙な症状の同僚を帯同するか否か空港で判断しろと言われて困った、アフリカでのエボラ出血熱流行時は公衆衛生学会での議論が白熱し、正しい保護具着用の講習も盛んだった・・・
街中で外国人観光客の増加を日々実感する昨今。来年はオリンピックもあり、感染症の日本への持ち込み、日本からの拡大を防ぐ対策についても注目したい(玲)。