今週は文春、新潮ともに主要記事として、韓国の慰安婦像問題を取り上げている。正直またか、と思うのだが、嫌韓ネタは今でも部数につながるのだろうか……。保守論者は最近、「韓国はもう相手にするな」と主張しているし、今回の記事にも、そう書かれているのだが、実際には何かあるたびに、保守メディアはパブロフの犬のように騒ぐ。一昨年の日韓合意でもう、この話はたくさん、と感じている読者も少なくないと思うのだが……。


 もちろん外交上、必要な抗議はすべきだろう。領事館前の新たな像設置には、ウィーン条約を盾に「公館の安寧の妨害・公館の威厳の侵害」という観点から「適正な対処を」と求め続ければいい。だが、それ以上はもう、エンドレスである。


  公館の周囲についてだけ、言うべきことを言い、あとは関知しない。あくまでも事務的に対応し、メディアもベタ記事で済ませれば、向こうの市民団体もいつかはテンションが下がるだろう。日本が騒ぐから、闘志を燃やすのだ。


  さて今週の本欄では、週刊誌報道ではないが、インパクトのある記事が新潮社の総合月刊誌『新潮45』にあったので紹介したい。『安倍・トランプ会談を実現させた「カルト宗教人脈」』。フリージャーナリスト・時任兼作氏のレポートである。


  ここで言う「カルト宗教」とは、統一教会のことだ。霊感商法や家族を破壊する洗脳、合同結婚式などで悪名高いこの教団は、国際勝共連合という政治組織を持ち、昭和期から自民党と深いつながりを築いてきた。記事によれば、勝共連合と持ちつ持たれつの「勝共推進議員」は最盛期、衆参165議員にも及んだという。


  記事によれば、トランプ氏の当選を予測できなかったことに激怒した安倍首相に、「トランプと連絡がつく」と申し出たのは、側近議員のひとり。勝共連合の重鎮を通じ故・文鮮明教祖の夫人・韓鶴子、そしてビジネスを通じて彼女と親しいトランプ氏の娘婿・クシュナー氏へとつなぎ、電話会談と面談を実現したという。


  事実なら、生長の家の元信者グループが核となる日本会議に支援されるだけでなく、反社会的色彩の強い統一教会にも、政権は〝借り〟ができたことになる。そもそも〝トランプ詣で一番乗り〟のメリットも不明だが、こうした闇ルートを使ってまで会いたがった日本側の姿勢は、トランプ新政権に最初から足元を見られる格好になりはしないのか。


  保守メディアでありながらこんな記事を載せる新潮社には、実はカルト嫌い、という特徴がある。最近、東京MXテレビの「沖縄ヘイト番組」が問題化しているが、ここ2年ほど、沖縄問題を中心に取材をする立場から言えば、沖縄ヘイトデマの発信源もまた、現地のカルト的集団だ。「幸福の科学」信者を中心とした少人数のグループで、せいぜい20〜30人程度の規模だろう。


  MXの番組に登場したインタビュー対象者は、このグループ周辺のメンバーで、週刊新潮が昨年、特集した同趣旨の記事のネタ元も、ほぼ同じ顔ぶれだ。産経新聞の沖縄報道でも、翁長県政に批判的な〝県民の声〟として、彼らは実に頻繁に取材されている。


  ところが週刊新潮は、「幸福の科学」への批判報道でも急先鋒なのだ。果たして編集部は〝沖縄でのネタ元〟の正体を認識しているのか。大嫌いな沖縄の反基地運動を叩くために、これまた大嫌いなカルトグループからデマ情報をもらう。その構図を認識したときに、編集部は果たしてどうするのか。私自身は言うまでもなく、情報が「デマだらけ」という時点で、カルト側はアウトだと思っている。


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三山喬(みやまたかし) 1961 年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。1998年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取 材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。2007年に帰国後はテーマを 広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って」 (ともに東海教育研究所刊)など。