2月4日に開催された「日本医療マネジメント学会 第12回和歌山支部学術集会」で講演させていただいた。10年近く前から同学会の会員だが、まさか講演させていただく日が来るとは夢にも思わなかった。


 講演後には“病床削減地域”で多職種連携や医療・介護連携の構築に悩む病院長から「すべての条件が揃うまで待つのではなく、今でもできることを始めるという話が印象に残った」といううれしい言葉をいただいた。


 すでに外来患者の減少が始まっており、人口も増えない地域には、人的リソースもなかなか集まらない。来る見込みがない明るい未来を待つよりも、現状を変えることで未来を変えていくしかない。冬山の登山をするには、すべての条件が揃わないと命取りになるが、経営は条件が揃うことを待っていては手遅れになる。参加してくれた200人以上の参加者のなかで、ひとりでも多くの医療人が動き出すことを願っている。


 せっかく和歌山まで行ったので、自分の講演以外にも、終了まで丸一日勉強させていただいた。そのなかで、ポスターセッションとして発表された「レスキュー薬自己管理の重要性」の内容が非常に興味深かった。


 入院中の麻薬管理は主に看護師が行っている病院が多いため、患者が使いたいときになかなか使えなかったり、「夜中に呼ぶのは申し訳ない」と痛みを我慢する患者が多いようだ。


 そこで、1回分のレスキュー薬を自己管理することにより、“本来使われるべき必要量”が把握できると期待される。筆者が最近取材した病院も、同様な背景からレスキュー薬の自己管理を導入していた。


 我慢する必要がなくなったわけだから、すべての患者の使用量が増えると考えるのが普通だろう。


 しかし、発表した病院では11症例のうち、使用量が増加したのはわずか4症例で、残りは減少か現状維持だった。現状維持はまだわかるが、なぜ減少したのだろうか。


『よくわかる医療業界』を出版した06年以降、「医療は安心産業」だと指摘してきた。今回の講演のサブタイトルにも「安心産業」というキーワードを入れている。医療人は患者を安心させることが求められる。患者を信じ、1回分のレスキュー薬を自己管理させることは、患者にとって大きな安心につながったのではないだろうか。


 他にも、我慢して声を上げない“サイレントマジョリティー”の患者は多いと思う。今回紹介した事例を参考にして、あなたの担当医療機関の“サイレントマジョリティー”を救う企画を考えてみよう。

 

「どこかの国の大統領が言っていた♪

声を上げない者たちは賛成していると♪

選べることが大事なんだ♪

人に任せるな♪

行動しなければNoと伝わらない♪」

(欅坂46『サイレントマジョリティー』)


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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。