実は、このところ頻繁に歯医者に通っている。奥歯の違和感が続いたので見てもらったら、あちこちに虫歯などの不具合が見つかったからだ。そういえば5年くらい歯医者に行ってなかった。


 キーンというドリルのモーター音を聞くと生じる、なんとも言えない恐怖感。治療中はつい肩に力が入ってしまうし、じんわりと変な汗も出る。そのため「痛くなければ歯医者にはいかない」派だったのだが(多くの人もそうだろう……と信じている)、その考えを改めさせられた一冊が『その歯みがきは万病のもと』。「はじめに」で、年代別に失う歯の本数を突きつけられて、一気に全部読んでしまった。


 昔虫歯で苦労したこともあって、近年は電動歯ブラシを使って入念に歯みがきしていた。本書でも勧めているデンタルフロスや歯間ブラシも使っている。比較的、歯のケアには気を使っているほうだと思うのだが、それでも虫歯ができてしまった。理由は、第1章を読んだらすぐに解決した。〈⑨電動歯ブラシなのに、手を動かしてしまう〉をはじめ、歯みがきのNG例をいくつも実践していたのだ。


 しかも、著者いわく〈セルフケアだけでもまだ足りない〉。毎日しっかり歯をみがいている人でも、〈口の中は1000億〜2000億〉もの細菌がすみ着いている(ほとんどみがかない人だと1兆!)。結局のところ、きちんとした歯みがきに加えて、定期的に歯医者に通って、歯をチェックしてもらい、歯石取りなどのケアをしてもらう必要があるという。


■歯を失う最大の要因「歯周病」


 日本人の7〜8割がかかっているとみられている「歯周病」(治療の必要があるのは3割程度)については、第2〜4章の3章を使って重点的に解説している。歯周病は、正確には〈歯の周りの病気〉なのだが、歯を失う最大の要因だ。


 もっとも、〈ほとんどの歯周病は、(中略)15〜30年もの年月をかけてゆっくりと進行〉していくし、早い段階なら対策のしようはある。本書では、最新の治療法を含むさまざまな治療法について、リスクとベネフィットを交えつつ解説する。自身が治療を受ける際に参考になるだろう。


 最近は徐々に知られるようになってはきているが、歯周病が怖いのは全身の病気とも関係している点だ。代表的な糖尿病をはじめ、狭心症、心筋梗塞、がんほかさまざまな病気との関係は本書で確認していただきたい。


 子を持つ親に役立つのは第7章で扱う「虫歯予防」と、第8章で扱う「悪い歯並び」である。奥歯の噛む面にある溝を埋めて虫歯から守る「シーラント」など、親世代が子どもの頃にはなかった“攻めの予防法”なども紹介されている。


 さて、冒頭にも触れたように今、歯の治療を続けているのだが、治療の最後に歯のクリーニングを受けることになっている。美人の歯科衛生士さんがやってくれるのはいいとして、いつも痛いわ出血するわで、「もう少し優しくやってくれないかな」と感じていたのだが、実は〈気持ちいいだけのクリーニングでは意味がない〉。プラークや歯石を取り残してしまうリスクがあるからだ。


 なかには、〈患者さんが嫌がって来なくなってしまうという理由からか、「出血や痛みが出そうなところにはふれないで」と歯科衛生士に言っている歯科医院もまれにある〉というから、「歯のクリーニングがうまい!」と思ったら注意したほうがいい。


 本書を読んだおかげで私は、痛いクリーニングにも嫌な感情を持たずに済みそうだが、「もっと痛くしてくれない?」とか言って怪しまれそうでもある。(鎌) 


<書籍データ>

その歯みがきは万病のもと

相馬理人著(SB新書800円+税)