「最近の業界誌は内容が暗すぎる。希望がまったく感じられない。あれではMRは読みたくなくなる」——。先週の金曜日に参加させていただいたイベントで、複数の医薬品業界関係者から耳にしたフレーズである。いくらMRが“ドM”が向いている職種だからと言っても、不安な状態が続くのは、精神衛生上あまりよくないことだ。


 そこで、金曜日の講演でも触れた「Karasekの仕事の要求度——コントロールモデル」についてご紹介したい。




 横軸に「仕事の要求度」を置き、縦軸に仕事の「コントロール度」を置く。ここで言うコントロール度とは、会社からのコントロールではなく、自分自身が“仕事を自分のものにしているか”の度合である。裁量権と言ってもいいかもしれない。それぞれの高低により、図のように4つのカテゴリーに分かれる。


 今日のMRの多くが、厳しいプロモーションコードや面談効率の悪化等により「高ストレイン」の中で活動をしているのではないだろうか。そこで製薬企業の本社勤務の人たちにお願いしたい。現場のMRを「高ストレイン」から「アクティブ」ゾーンに導く方法を考えてほしい。人間は長期間「高ストレイン」ゾーンにとどまることはできない。高い確率で疾患を患うことになる。


 MRを「アクティブ」ゾーンに導く方法は大きく分けて2つある。ひとつは、以前にも本コーナーで紹介した「ASICTUSの法則」を用いて“先生方が興味を持つコンテンツを提供してMRに問い合わせがくる仕組み”を構築することだ。


 Attention(認知・注意)→Search(検索)→Interest(興味・関心)までを本社が担い、Consultation(相談・協議)→Trial(試用)→Usage(リピート使用)の3つのプロセスを現場のMRが担う。最後のShare(共有)は、本社とMRがしっかりと協力して実行していく。


 もうひとつは、MRに“裁量権”が高い仕事をさせることである。もちろん、製品に直接関係する情報はルールが存在するから裁量権を高めることは難しい。だから、自社製品が地域にどう貢献できるか?という視点をMRに持たせることが必要となる。 


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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。