25日に大阪で講演した際、参加してくれた高齢の医療従事者から、いずれ日本の医療制度が向き合わなければならない課題について質問された。


「ヨーロッパを中心とした海外では、口から食べられなくなること、イコール“死”という認識で、高齢者に積極的な治療を行うのは“虐待”であると認識されている。しかし、日本では、延命治療のためだけの胃瘻、高齢者への透析治療や高度な手術などが当たり前のように行われている。日本も財政難が続くと、高齢者を切り捨てることになるのではないか?」


 私は「70歳(いつもは65歳以上と言っているが会場を見渡して空気を読んで5歳プラスした)を過ぎたら“死ねるチャンス”を逃してはならない」という考えを持っていることを話したうえで、日本では「後期高齢者には透析をしない、手術をしない」と一律に決めるのは馴染まないし、受け入れられないだろう。ただし、病床再編により今後ますます貴重になる(高度)急性期病床に、例えば85歳以上の患者さんを入院させるというのは限定的にすべきだし、そのような方向に向かうだろうと答えた。


“ダブル改定”に向けた中医協の「医療と介護の連携に関する意見交換」が22日に行われた。この意見交換は、中医協で具体的な検討に入る前に▼看取り▼訪問看護▼リハビリテーション▼関係者・関係機関の調整・連携——について、現状と課題を明確にするために実施するものである。この日は看取りと訪問看護が取り上げられた。


 とくに、看取りに関しては豊富なデータが示されている。例えば、65才以上人口あたり訪問看護利用状況(年間受給者数)と、自宅死の割合には、正の相関があることが示されており、木村情報技術の本社がある佐賀県は、最低のヤバイ状況であることがわかる。


「主な課題」では、最初に「医療福祉従事者も、『人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン』を十分に認知しておらず、患者本人の気持ちや意思を尊重した医療や介護を十分に提供できていない可能性がある」と指摘されている。


 私が25日に受けた冒頭の質問への模範解答は、「同ガイドラインの周知を図ることが重要だ」だったのかもしれない。 


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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。