森友問題は国会予算委員会の審議が終了し、また籠池氏サイドからの情報が出なくなったことで、一時期の過熱状態は過ぎたかに見える。次の“爆弾”が出るまでの小康状態か、あるいはもう、疑惑の追及は先細りになるだけなのか、微妙な段階に差し掛かっている。


 籠池氏側が“弾を撃ち尽くした”としたら、残るは記録類を一切処分した、と言い張る財務省・国交省、あるいは土地取引の実務を担っていたという元顧問弁護士周辺から新事実が暴かれる以外、インパクトのある展開はないように思える。新聞社や文春、あるいは共産党あたりの調査能力が、果たしてそこまで肉薄できるのか、というところが、これからの焦点になるのだろう。


 ひと昔前までなら、霞が関の背任疑惑として、東京地検特捜部の動きが注視されたはずだが、権力中枢の腐敗を暴く能力や気概がもう、検察庁にないことは、万人が知るところだ。忖度と保身のピラミッドは、日本の公権力をすでに覆い尽している。


 今週の各誌は、昭恵夫人の奔放さを掘り下げている。文春は『安倍昭恵夫人“神ってる”破壊力』、新潮は『「安倍昭恵」という家庭内爆弾』、週刊朝日は『“籠池砲”で浮上した安倍夫妻の「不仲説」』といった具合だ。


 週刊SPA!はやや角度を変え、菅野完氏による『震源は第一次安倍政権の教育基本法にある』という解説記事。またFLASHは、菅野氏と組んだジャーナリスト赤澤竜也氏と取材班による『籠池独占密着 「私が安倍夫妻と松井府知事を討った理由」』という特集を展開している。


 個人的に最も興味深く読んだのは、サンデー毎日が関連記事として載せた『ついに日本会議政治が沈没す』という解説だ。執筆者は靖国問題などの著書を持つ毎日新聞編集委員・伊藤智永氏。菅野氏もそうだが、この問題はやはり、日本会議をめぐる話として掘り下げる視点が一番面白い。それこそが、今という時代の根幹に横たわるテーマだからだ。


 伊藤氏の記事でとくに目を引いたのは、日本会議の設立関係者でもあった村上正邦・元労相のコメントだ。「日本会議自体にそんな力はない(略)幻影の力を安倍が利用しているんで、日本会議が安倍を操っているんじゃない。逆なんだ」。しかし、安倍政権のそうした構造も、森友問題をきっかけに変わってゆく可能性が強く、両者の蜜月はやがて終わりを迎える、というのである。


 そういった目で見ると、保守系の読者が多い文春に『稲田朋美「右翼人脈」と「怪しい政治資金」』という、安倍首相側近で最も日本会議的な稲田防衛相の思想的背景を暴く記事が掲載されたことも興味深い。カルト右翼と良識的な保守がこれを機に分断されてゆくのなら、それだけでも森友騒動には意味があったと思う。


 文春は『渡辺謙不倫inニューヨーク』という得意ジャンルでの特ダネも放った。また先週、触れられなかったが、新潮が前号から始めた『トクホの大嘘』はスケールの大きなキャンペーンだ。各飲料メーカーが力を入れ、1日中商品のCMが流れているトクホ飲料について、その「脂肪吸収抑制」の効果をインチキだと斬り捨てる告発記事である。今週も各社の商品を1つひとつ俎上に上げ、8ページもの大特集を組んでいる。果たして、各メーカーはどう出るのか。今後の展開から目が離せない。


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三山喬(みやまたかし) 1961 年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。1998年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取 材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。2007年に帰国後はテーマを 広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って」 (ともに東海教育研究所刊)など。