「成長戦略に遠隔診療に対する報酬増額を」(NHK)
「遠隔診療普及へ報酬増額=安倍首相『しっかり評価』」(時事通信)
「ICTによる効率化へ、診療・介護報酬など議論」(日経新聞)
4月14日に開催された政府の未来投資会議の報道では、各メディアが遠隔診療の評価を中心に、ICTによる効率化について報じた。しかし、今後の方向性を見通すには、同会議構造改革徹底推進会合の翁百合会長が提示した“目指す姿”「医療や介護の軸足を『健康管理と病気・介護予防』『自立支援』に移す」ことを我われは意識しなければならない。
医療と介護の軸足を予防や自立支援に移すということは、従来どおり保険で賄う重症化予防に加え、保険外にシフトするということだ。
具体的には、国民一人ひとりのデータを一元化する「国民にとって価値ある形でのデータ利活用基盤の構築」と、データヘルスを強化する「保険者によるデータを活用した個人の予防・健康づくりの強化」、実際の診察以外にもICTを活用してモニタリングを実施する「かかりつけ医を中心としたICTを活用した健康管理・医療」――などを提言した。
(財)ヒューマンサイエンス振興財団の「医療ニーズに関するアンケート調査」に出ているおなじみの“治療満足度と薬剤貢献度”をみると、過去20年間で新薬の登場が各疾患の治療満足度を上げてきたことがわかる。
もちろん、難病を中心とした満たされないニーズには、これからも画期的な新薬の登場を期待したい。
一方で、日常の(在宅)患者さんのモニタリングや遠隔診療は、AIを含めたICTの活用が不可欠であり、製薬企業側も、こうしたICTの進化を“追い風”にするような戦略を考えていかなければならない。
15日に開催した「知恵の輪クラブ」(メディエンス&木村情報技術の共催)では、メディカルサプリメント分野で有名なヘルシーパスの田村忠司社長にご講演いただいた。
田村社長は建設業界で起きているBIM(Building Information Modeling)の動きを紹介した。従来の設計は、まず2次元で作成した図面を3次元にするが、BIMでは最初から3次元で作成し、3次元の形状情報(モデル)と、その形の構造等の属性情報を持たせる手法である。このBIMに基づいた情報をAI搭載の建設機器に覚えさせれば、建設の自動化が可能になるというわけだ。田村社長の知り合いの建設業界の関係者は「これからの建設業界の役割は何だろう」と途方に暮れていたという。
我われ医療業界の人間も、ICTの進化に、途方に暮れる時が来るだろう。これからの医療で人間が果たすべき役割は何か? この問いに田村社長は、「健康の回復や、病気の予防に向けて患者さんの行動変容を促すこと」と述べていた。私も同感だ。人を動かすのは、人間でなければ難しい。
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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。