今年に入ってアマゾンvsヤマト運輸の構図が浮き彫りになり、ヤマト運輸は9月から一般向けの宅配便の料金を5~20%も値上げする方針を固めたことが報じられた。
昨年末に佐川急便の配達員が荷物を投げたり蹴ったりして粗末に扱った動画が拡散されてから、わずか半年足らずで宅配業界は一気に“変革のチャンス”を迎えたような気がする。値上げに関しては、騒動のきっかけとなった佐川急便なども追随するだろう。
混乱の原因は▼通信販売市場の拡大▼再配達の増加▼ドライバーの人材不足――の3つが特に大きいようだ。これらの問題を解決するには「ラストワンマイル」で宅配業者と利用者側がいかに折り合いをつけるかがポイントになるだろう。
「ラストワンマイル」とは、通信業界や物流業界で使われる言葉で、文字どおり、基地局から顧客の自宅まで結ぶ最終区間のことを指すが、宅配業界の“再配達”問題は、まさにラストワンマイルの問題だ。一番簡単な解決策はコンビニなどに利用者が取りに行く形だろう。いずれにしても、利用者側が“歩み寄り”をしない限り、宅配業界のラストワンマイルは永遠に解決しない。
“ラストワン〇〇”については、最近、ソニーの平井一夫社長が「ラストワンインチ」を提唱している。こちらは、コンテンツと人間の最後の接点のことを指しているようだ。コンテンツを取得する“指”とデバイスとの距離がワンインチであることから名付けたようだ。
では、MRやMSの仕事はラストワン何になるのだろうと考えた。ICTの進展により、MRでなければならない仕事は減っているのではないか?と常に指摘されている。ネットで確かに情報は取れる。しかし、自分の課題が何なのか、治療が正しいのかは、なかなか自分で認識することが難しい。
そこで重要となるのが“ラストワンメーター”として医療従事者に情報を届けるMR(MS)の役割だ。コミュニケーションの成否が適正使用や実績に格差をもたらすことになる「ラストワンメーター」。私自身も、講演や研修を通じて、「ラストワンメーター」の改善をサポートしたいと思う。
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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。