このところ、一番読み応えのある記事が多いのは、サンデー毎日のように思う。もはや週刊誌そのものが年配者向けメディアになって久しいが、“死ぬまでセックス”みたいな記事が好きな人は週刊現代かポスト、ワイドショー的なゴシップのインパクトが欲しければ文春と新潮、多少重量感のある読み物を求めるなら新聞社系、という棲み分けになってきたと思う。


 今週号では、保坂正康氏の連載記事『一語一会 私が出会った「昭和の怪物」』が面白い。この回のタイトルは『大本営参謀瀬島隆三が語った「虚偽」の戦争体験』。前号の『「昭和の参謀」を徹底検証 瀬島隆三はソ連のスパイだったのか!?』に続くものだ。


 瀬島と言えば、昭和史の闇に生きた人物として、戦後一貫して注目された人だ。山崎豊子『不毛地帯』の主人公・壱岐正のモデルとしても知られる。戦後、伊藤忠商事に入って会長となり、中曽根政権のブレーンにもなったが、終戦時、日本兵50万人のシベリア抑留をソ連との秘密交渉で認めた黒幕と言われたり、ソ連のスパイだった疑惑が囁かれたり、謎多き人生を送った人だった。


 保坂氏は瀬島の実像を追ってその生前に取材を積み重ねた思い出を綴っている。瀬島は抑留中、東京裁判にソ連側証人として出廷するために一時帰国した経緯を「わけのわからないうちに飛行機に乗せられた」と振り返っているが、実際には一時帰国前、ソ連軍幹部と裁判の打ち合わせを綿密に行っていた記録を見つけるなど、本人の回顧にはいくつものウソがあることを保坂氏は突き止めることができたという。


 週刊新潮は『「警視庁刑事部長」が握りつぶした「安倍総理」ベッタリ記者の「準強姦逮捕状」』という前々号の中川俊直代議士の“重婚不倫”に続いて政権に痛打を与えるスクープを放った。ベッタリ記者とは元TBS記者の山口敬之氏。菅官房長官の元秘書官という経歴の刑事部長が、政権への忖度による判断か、山口氏の逮捕を直前で中止させたスキャンダルだが、記事によれば山口氏は女性を薬物で昏倒させホテルに連れ込んだ疑いもあり、事実ならとんでもなく悪質な事件である。


 と、新潮らしからぬ(失礼)権力監視の報道を讃えたいと思うのだが、一方で新潮は前号から「KAZUYA」なる人物のコラム連載を始めている。ユーチューバーという肩書きだが、正体はネトウヨ有名人。活字媒体でモノを書くにしても、ヘイト刊行物で有名な青林堂がお似合いだ。天下の新潮社ともあろうものが、どうしたのか、とため息をつきたくなる。


 今週号は沖縄の辺野古問題を取り上げ、ヘイトデマを撒き散らす内容。《現地に行かないとわからないことがあります》などと書いているが、中身は抗議テントをちょこっとのぞくお決まりのネトウヨツアーだ。取材らしい取材はせず、「県外の活動家が大半」「反対派は暴力行為に及ぶ」といったネトウヨ仲間発信の定番ネタを書き散らしている。


 自慢ではないが、こちらは1年以上かけ現地を歩き、そのうえで本を書いている。逮捕者41人中4人が韓国人だった、などとこのライターは得々と書いているが、警察は見せしめ効果の高い人を、狙い撃ちで逮捕する。この比率には警察の嗜好以外、何の意味もない。結論から言えば、県外からの抗議参加者は平均1割ほど。警察や右翼による暴力は、肋骨骨折や顔面が腫れ上がる負傷者を出しているが、高齢の抗議者たちの逮捕容疑は、押した押さないといったレベルだけだ。週刊新潮さん、よろしく頼みます。


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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。98年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。07年に帰国後はテーマを 広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って』(ともに東海教育研究所刊)など。