5月17~18日に都内で開催されたeyeforpharma Japan 2017に参加した。驚いたのはそのプログラムだ。


 最初のセクションが「ステークホルダーのニーズを把握し、 連携を深める~地域包括ケアシステムの浸透に対し、医薬品企業はどのように適応すべきか~」で、2つめが「新しいテクノロジーを用いて、 顧客とのエンゲージメントを最大化~革新的な技術でヘルスケア業界に改革をもたらす~」だったのだ。“地域包括ケア”とAIやIoTなどの“デジタルヘルス”が同じ場で議論される時代になったということだろう。


 確かに、この2つのテーマは真逆のように捉えられているかもしれない。超アナログと超デジタル。私がIT企業の木村情報技術に転職して『地域包括ケアとは、○○である』を出版したくらい、違和感を持った参加者が多かったのではないか。


 しかし、地域包括ケアへの対応にしても、デジタルヘルスへの対応にしても、組織改革を求める“大きなチャレンジ”という意味では同じことだ。地域包括ケアへの対応ができない組織は、おそらく、デジタルヘルスへの対応も遅れるだろう。


 対応が遅れて、変革期に衰退していく組織・人のフレーズがある。それは、「それで売り上げが上がるんですか?」である。この問い自体が間違っている。


 地域包括ケアとデジタルヘルスのどのように対応すれば、企業・製品価値を最大化できるのか? これを自問すべきである。今回、eyeforpharmaに出演した企業関係者は、この自問自答がしっかりできているのだろう。


“冷蔵庫シンドローム”という言葉をご存じだろうか。これは、文字どおり、手持ちのリソースだけでなんとかしようとする姿勢だ。冷蔵庫をのぞきこみ、野菜が多いから野菜炒めを作ろう!と考えるだけではダメだ。地域包括ケアとデジタルヘルスへの対応も、今あるリソースだけでは不可能だろう。


 冷蔵庫を開ける前に、まず、何を食べたいか考える。そして、冷蔵庫を開け、足りないものを買いにいくことが重要だ。


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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。