加計学園問題を取り繕うために、国政は惨憺たる状況になってしまっている。政府与党は総理を守り、この問題での追及を逃れたいために、国論を二分する大テーマ・共謀罪法案さえ、中途半端な審議で強行採決し、国会を閉じようとしている。


 そんななか、今週の週刊新潮は『「結婚30年」記念日の夜に主治医が私邸に駆け付けた!』と題して、安倍首相の体調悪化をスクープした。イタリア・サミットから帰国したあとの6月9日、昭恵夫人との結婚記念日を食事会で祝った夜、慶応病院の主治医が私邸に駆けつける騒ぎがあったという。


 新潮はこの特集で、菅官房長官の危機管理対応のまずさを指摘したほかに、会見で官房長官を追い詰めた東京新聞社会部の女性記者について、長官直々に「身辺調査を命じた」という話を「官邸関係者」の情報として報じている。政権の要石とされるこの人物には、恫喝と謀略によって批判を封じ込める体質が骨の髄まで染みついているらしい。


 週刊朝日は『前川喜平前文科事務次官が新証言 “お友達ファースト”安倍官邸が文科省に命じた3つの“謀略”』と銘打って、政権内で常態化している“ゴリ押し”の実態を暴いている。3つの謀略とは、首相の“お友達”が関わってきた「明治日本の産業革命遺産」の申請を特別扱いで支援したり、文化功労者を選定する文化審議会の人選を、政権に協調的か否かで、差し替えようとした警察出身の官房副長官の存在であったり、という“いかにも”な話だが、とくにひどいのは、天下り問題の検証で、文科省が省内の全データを監視委員会に提出したところ、その中に外務省や内閣府のケースも含まれていて、この官房副長官が激怒して、他省庁に飛び火する事例のデータ隠しを命じた、という話である。


 週刊ポストも『小沢一郎よ、「安倍一強」をあなたはどう思っているのか?』というインタビューや『NHKが黒塗り報道した〈官邸の最高レベル〉への忖度』といった記事で現状を批判。現職警官による母子殺人事件やタレント小出惠介の淫行問題を大きく扱った文春も、文科省の「ご意向」文書を作成した33歳の女性課長補佐に、加計学園騒動の責任をすべて被せようとする政権の動きに釘を刺し、《こんなことがまかり通れば公僕を志す者はいなくなる》と牽制する記事を載せている。


 そんな惨憺たるニュースが相次ぐなか、サンデー毎日に掲載された作家・橋本治のインタビューが興味深かった。タイトルは『「世界の終わり」の先 それでも“絶望”しない』。現在の世紀末的状況を、橋本らしい視点で語っている。


《トランプが大統領になるプロセスではっきりしたことの一つは、『ニューヨーク・タイムズ』に代表されるリベラルなクオリティ・ペーパーが何かを言っても、複雑すぎて俺たちにはわからない、という不機嫌な感情を呼び起こすだけだということ》


《私は、昭和と平成の間に「バカ」の地層があって、「社会」というものはその下に眠ってしまったと指摘したんだけど、バブル期は日本人がばかになった時代としか思えないんです》


《(福沢諭吉は)「ものごとを深く考えなさい。そのために学問をしなさい」と主張した過激な保守主義の思想家だったんですね。でもそういう保守主義って今の日本にはもうないですよね》


 社会がとことん劣化した流れを淡々と語りつつ、それでも橋本は《あんまり絶望的にはなれない》と言い、《(世界が)終わったら、終わったで、またやりましょうっていうことなんです》と締めくくっている。ある種、あきらめの境地に立つことで、見えてくる風景もあるということか。凡人にはなかなかハードルが高い。


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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。98年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。07年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って』(ともに東海教育研究所刊)など。最新刊に沖縄県民の潜在意識を探った『国権と島と涙』(朝日新聞出版)がある。