「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし」--。ノムさんこと野村克也さんの名言である。この名言はプロ野球の勝敗に対して述べられた言葉だが、倒産、リストラ、工場閉鎖、撤退など暗いニュースだけを扱っている「不景気.com」を眺めていると、経営にも通じることを感じる。
6月20日の同サイトには、医療界に関する2つの民事再生、破産の記事が紹介された。「岐阜中央病院」などを運営する「医療法人社団誠広会」が87億円の負債を抱えて民事再生法の適用を申請したという。 誠広会は今回の民事再生について「当法人は地域医療へのさらなる貢献をめざした病院事業の拡大の過程において、設備投資の先行等により経営悪化に至りました」と説明している。幸いにも、メディヴァ社などの支援を得ながら事業は継続される。
▲13.7%(12億1500万円)――。同法人が2011年3月期から2016年3月期の5年間に減少させた年収である。今後の制度改革の流れのなかで、5年間で▲13.7%程度の売上げを減少させる法人が、今後も出てくるだろう。 岐阜県の地域医療構想は非常に攻めている。各圏域の方向性を“名指し”で示しているのだ。誠広会が位置する「岐阜圏域」の内容を見てみよう。
【急性期医療】
岐阜大学医学部附属病院<県全体>、県総合医療センター、岐阜市民病院、松波総合病院 (特定分野等) 岐阜赤十字病院(災害拠点・感染症)、長良医療センター(周産期)、村上記念病院(脳卒中)、岐阜ハートセンター(心疾患) (地理的要因) 羽島市民病院(羽島市)、東海中央病院(各務原市)、岐北厚生病院(山県市)
【病院間連携】
岐阜大学医学部附属病院、県総合医療センター、岐阜市民病院、松波総合病院において、病院間の関係整理、位置づけについて研究、検討(地域医療連携推進法人制度の導入についても検討) 残念なことに「岐阜中央病院」の名前はない。今後、誠広会がどのような医療機能でポジショニングをして再建するのか注目だ。 もうひとつは、福岡の臨床試験支援「西日本エスエムオー」の破産だ。理由などは報道されていない。
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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。