「患者の皆様へ 大切なお知らせ」――。医療法人群馬循環器病院(高崎市)は6月29日、前橋地方裁判所に民事再生法の適用を申請したことを同院のホームページで明らかにした。


 2週連続で病院の民事再生法の適用申請に関するニュースを紹介することになったが、“プラス改定”が期待できない2018年度以降は、さらなる経営環境の悪化が懸念される。


 群馬循環器病院が患者へのお詫び文を掲載した29日、日本病院薬剤師会(日病薬)は「2018年度診療報酬改定に関する要望書」を同会のサイトに掲載した。


 今回要望したのは、8個の重点要望事項と14個の一般要望事項である。重点要望事項の最初には、筆者も疑問に感じている「地域連携の評価」を挙げている。具体的には、回復期リハビリテーション病棟入院料や地域包括ケア病棟で算定できない病棟薬剤業務実施加算を算定対象とするよう求めている。


 地域包括ケア病棟は、急性期からの転院(棟)や糖尿病の教育入院など、地域医療構想や地域包括ケアの要として期待されており、2014年度に新設されて以来、わずか3年ちょっとで2000病院近くが届け出たと見られる。


 再入院率を減らすには、入院中の患者への服薬教育・トレーニングが重要となる。しかし、地域包括ケア病棟で病棟薬剤業務実施加算を算定できなければ、薬剤師を配置するのをためらう経営者は多いだろう。だから、チーム医療における薬剤師のポジションを確立するためにも、日病薬は、この項目をトップに持ってきたのだろう。


 同様に、退院時の減薬を評価した薬剤総合評価調整加算も地域包括ケア病棟等では算定できないため、日病薬は重点要望事項のひとつに盛り込んでいる。従来からある薬剤管理指導料も地域包括ケア病棟等では算定できないため、一般要望事項に加えられている。


 これまでコストセンターとして見られてきた薬剤部が、経営を改善させるプロフィットセンターになるには、地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟等における薬剤師配置の評価がポイントになりそうだ。 彼らが病院から評価されるための情報提供がMRにも問われることになる。


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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。