「コンサルの人は、みんな地域包括ケア病棟に転換しろという」――。先日、約200床の病院経営者から打ち明けられた言葉だが、高度急性期が中心の病院でもなく、慢性期でもない中規模の病院は、2018年度の“Judgement Year”(審判の年)後の進路に頭を抱えているだろう。 


 経営者の気持ちになって考えてみよう。まず、大きな枠組みとして“大きな診療所”としてポジショニングするという戦略がある。 


 具体的には、在宅療養支援病院となって在宅医療の役割を担うことに加え、地域包括診療料を届出で“かかりつけ医”としての機能も構想区域の中で果たしていく戦略だ。在宅療養支援病院(在支病)は、在宅療養支援診療所と基本的な施設基準は同じで、①24時間連絡を受ける体制の確保、②24時間の往診体制、③24時間の訪問看護体制、④緊急時の入院体制、⑤連携する医療機関等への情報提供、⑥年に1回看取り数等を報告している――ことの他に、許可病床200床未満であること又は当該病院を中心とした半径4km以内に診療所が存在しないこと等が求められている。在支病は2015年7月1日現在1074病院にまで増えた。


 もうひとつの大きな枠組みは、在支病とは逆に、自らは在宅医療の担い手とならず、在宅医療を行う開業医をサポートする側にポジショニングする戦略だ。具体的には、2014年度の診療報酬改定で新設された在宅療養後方支援病院(在後病)となり、開業医に▼後方病床▼教育(コミュニティ)▼相談――という3つの安心を提供する。在宅患者のための救急病院という位置づけだ。 


 在後病は①許可病床200床以上の病院であること、②当該病院を緊急時に入院を希望する病院としてあらかじめ当該病院に届け出ている患者(入院希望患者)について緊急時にいつでも対応し、必要があれば入院を受け入れること――などが施設基準となっている。入院希望患者の情報を開業医と共有することで、入院時に迅速で適切な対応をすることが期待される。しかし、届出数は300病院台だと思われる。 


 在後病に加えて地域包括ケア病棟も持てば、地域にとって、使い勝手のいい病院として認識されることになるだろう。


 MRとしては、在後病的な位置付けの病院が狙う“顔の見える連携”をサポートすることがポイントになると思う。


 もちろん、専門的な強みがあれば“一本足打法”で勝ち組になれる病院もあるかもしれない。 


 P.F.ドラッカーは、「『何をもって憶えられたいか』を自らに問い続けろ」と指摘していた。この言葉をすべての医療関係者が胸に刻まなければならない時代になった。


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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。