来週が国会の集中審議、その次の週が内閣改造と、国会閉幕後も政局は激しく動いている。“もりかけ騒動”の一連の流れを改めて振り返ると、事ここに至った政権側の最大の過ちは、それぞれの疑惑そのものより、「問題発覚後の傲慢で馬鹿げた対応」の数々のせいだったことをやはり痛感してしまう。
与党側はここに来て、元愛媛県知事などを引っ張り出し、獣医学部新設の正当性を躍起になって主張しているが、前川前文科次官の言う「規制改革は必要と思うが、問題はそのやり方」という指摘には、何の反論にもなっていない。そもそも「一点の曇りもない手続き」だったなら、これまでの数々の記録隠しや「記憶にない」の答弁連発、あるいは人格攻撃といった醜悪な対応は、いったい何のためだったか。最初からすべてをテーブルに載せればよかったのに、ここまで見苦しい対応を重ねたうえ、そのウソがボロボロと崩れてきてしまうと、今さら「曇りのない手続き」という議論に持ち込むのは、もはや難しいと思う。
保守系誌にも政権擁護は見られない。今週の週刊文春は『安倍政権「お友達ありき」の決定的証拠 「加計に決めました」出来レース議事録』として、獣医学部特区への公募開始2ヵ月前、獣医師会との極秘会合で、内閣府山本幸三大臣が「四国への新設」がすでに決まったような発言をしたことが暴かれている。
週刊新潮は『検査入院で手負いの「安倍総理」 トホホな内閣改造』という特集で、目玉の新規閣僚は三原じゅん子くらいしかいない政権の手詰まり感を伝え、《いくら小手先の人事で国民の目を誤魔化しても、ハリボテ内閣に変わりはないのだ》と手厳しく切り捨てている。巻末では櫻井よしこ氏が自らの連載コラム欄で《加計学園報道問題は今や事の本質を離れ、文科省、前川氏、朝日新聞などの思惑が渦巻いて反安倍政権と倒閣の暗い熱情で結ばれているのではないか》と、右派安倍支持層の唯一の主張となった「マスコミ陰謀論」を振りかざしているが、批判する側に道理がないとするならば、新潮編集部さえもはや「暗い熱情」の一味と化してしまった、ということか。
新潮のメインは『告白6時間!渦中の「松居一代」独占手記』。これはこれですごい。渦中の女性と組み、“天敵・週刊文春”への悪口を存分に言わせている。彼女もまた、新潮編集部を喜ばせる“ツボ”を心得ているようだ。記事の冒頭では、ユーチューブ動画の撮影風景がこんなふうに描写されている。
《(私は今)都内のとってもきれいなホテルにいるんですよ。私を呼んで下さったのは、週刊新潮さんなんです。今回のこの私の戦いの火ぶたを切ったのは週刊文春さん。約束を守ってくれなかった。私を裏切ったんですね。また、5月末でしたかね。中吊り問題覚えていらっしゃいます? 週刊文春に新潮さんはやられたんですよ……》。そのほか文中では、テレビ各局に口止めを図る夫の所属事務所・ホリプロの暗躍や、《ホリプロの手先となって私を苦しめてきた》女性セブンへの恨みつらみが延々と語られている。
週刊現代では『豊田真由子議員の夫が初めて語った「家庭内の真実」』という「独占スクープ告白」が目を引いた。実際には、自宅マンションに帰宅した官僚の夫をエントランスでつかまえ、その場で粘ったやり取りである。一連の騒ぎに関しては「妻は妻で『身から出たサビ』のところもあるのかな、と思っています」と受け止める夫だが、代議士としての妻の忙しさや心労、そして深く反省している現状を懸命に釈明。何よりも小学生の2人の子供のことが心配なようで、言外に「そっとしておいてほしい」というメディアへの思いがにじむ語り口だった。
そんなわけで、来週、再来週と激動の夏の政局で、雑誌ジャーナリズムはインパクトあるスクープをぶつけられるのか。興味深い展開が続きそうだ。
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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。98年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。07年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って』(ともに東海教育研究所刊)など。最新刊に沖縄県民の潜在意識を探った『国権と島と涙』(朝日新聞出版)がある。