実行委員長として、1年間かけて準備してきた「第3回MR-1コンテスト」を8月26日に星薬科大学で開催した。 


 当コンテストは、適正使用情報の提供・収集を行うなかで、医療への貢献を目指し、日々工夫しながら活動しているMRにスポットライトを当てることを目的に、2014年に第1回、2015年に第2回を開催し、今回で3回目の開催となった。 


 今回は予選(プレゼン動画と作文で審査)を勝ち抜いた8名によって競われ、最高殊勲MR(MVMR)には、武田薬品の吉田真幸さん(那覇営業所)が選ばれた。吉田さんと決勝を戦った準MVMRの上杉航大さん(サノフィ)が若手だったことから、“経験の差”が勝敗を分けたという声が、終了後にコンテスト参加者から聞かれたが、果たしてそうだろうか。 


 吉田さんと上杉さんによる決勝戦は、審査委員を務めていただいた横浜内科学会の小野容明会長とのロープレによる審査が行われた。事前に医師によるロープレを行うことは周知していたし、審査委員の名前も公開していた。10名の審査委員のうち、医師は小野先生と、遠隔診療で著名な京都府立医科大学の加藤浩晃先生の2人だった。小野先生は睡眠時無呼吸症候群(SAS)治療の権威である。ロープレの中でSASについて触れられることは予想できたはずである。もし、準MVMRの上杉航大さんがSASに関連した質問を事前に想定していたら、結果は変わっていたかもしれない。 


 翌27日には、小野先生が会長を務める横浜内科学会と神奈川県内科医学会(宮川政昭会長)の共催による「第3回MR研修会」が開催された。MR-1コンテストのファイナリストも課題に挙げていた“幅広い知識”を深めさせるために、▼膠原病リウマチ▼パーキンソン病▼糖尿病▼循環器疾患とタバコ▼高血圧▼肝障害▼認知症と運転免許▼SAS診療の地域連携――などについて、それぞれの専門医から“MR向け”の講義があった。 


 同会の開催趣意書には次のように書かれている。 


「MRが単なる医薬情報担当者ではなく、医療人として地域医療に参画できる道を模索していかなければならない。地域医療を理解し、その内なる存在にならなければ将来はない。医療人として医療連携の中に存在し、さまざまな職種の接着剤となる可能性はないだろうか」 “内なる存在”になる。これが、今後のMR活動のキーワードになるだろう。研修会では、会場の前から4列に座るMRがひとりもいなかった。“内なる存在”になるには、まだまだ医師との心理的な距離は遠いように感じた。


 MR-1コンテストに出場したファイナリストのように、多くのMRに“一歩を踏み出す勇気”を持ってほしい。


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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。