最もシンプルなコンサルティングスキルは、クライアントとともに「増えるもの」と「減るもの」を考えることだ。今後、担当地域で「増えるもの」と「減るもの」を挙げ、それぞれ「チャンス」(C)なのか「ピンチ」(P)なのか印を付けさせる。次に、CとPに分けて、Cを最大化する対策とPを最小化する対策を考えさせるのだ。私が製薬企業の支店や営業所に呼ばれた際には、必ずこのワークをやってもらう。


 2018年度の診療・介護報酬のダブル改定以降に「増えるもの」と言えば、在宅医療と遠隔診療の2つをすぐに挙げるだろう。困ったことに、この2つが増えると“医師との面談回数・接触頻度”が減ることになる。MRにとってはPマークがつくリスクになる。開業医がお昼休みなどに在宅医療に出かけるということは、我々にとっての“ゴールデンタイム”が失われることになるし、在宅医療“専門”の医師は、そもそもクリニックにいない。


 弊社(木村情報技術)も、WEB講演会をサポートする立場として、在宅医療に熱心な医師にどうすればWEB講演を観てもらうのか?日々頭を悩ませている。彼らは、どのタイミングならWEB講演会を視聴してくれるのか?  去る8月28日にユート・ブレーンセミナー「地域医療の変化と製薬企業の営業、MRの未来を考える」セミナーに出演させていただいた。パネルディスカッションの際に、この疑問について、パネリストとして参加していた松原アーバンクリニックの医師・神野範子さんに率直に投げかけた。  すると、神野さんは「朝ですね。実際に7:30頃に勉強していますし」と述べた。


 もうひとつの増えること「遠隔診療」も、在宅医療と同様に、昼休みや診療後の夜に実施する医師が増えることが予想される。ゴールデンタイムに訪問してきたMRに対し、受付の職員から「先生はいま、遠隔診療中ですのでご面会いただけません」と断られるケースが出てくるだろう。遠隔診療に取り組む医師も、空いているのは「朝」くらいではないだろうか。


 実際に、早朝にWEB講演会を配信している企業があるが、私は早朝WEB講演会に加え、リモート・ディテーリング(電話とPCを利用した遠隔ディテーリング)が、2018年度以降に有効になってくると予想している。 “早朝”という市場に対し、うまくWEB講演会とリモート・ディテーリング(リアルMRとの連携が大事)を活用できる製薬企業とMRが実績を高めることができるだろう。


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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。