週刊新潮が先週に引き続き、『「漢方」の大嘘』という巨大特集を掲載した。全国の大学医学部に漢方のカリキュラムが組み込まれたのは、10年ほど前にすぎず、日本の医師の多くは、生薬の働きや副作用に充分な知識を持たないまま、マニュアルに沿った処方しかしていない。そんな危うげな「マニュアル漢方」を広めた“元凶”は、医療用漢方薬の国内シェア8割を誇る「ツムラ」だ、と企業を名指しして批判する内容だ。 


 今週の第2弾では、日本東洋医学会が1989年に始めた漢方専門医制度によって、安直に“専門医”が急増していった仕組みをひもとくほか、前回に引き続き「副作用辞典」として、主要な漢方薬一つひとつに注意すべき副作用の実例を挙げている。 


 新潮は以前、「トクホ飲料」について、その効能を過大に宣伝する傾向を批判、『トクホの大嘘』と題した大特集を組んだが、今回は漢方薬をターゲットに、そのリスクを訴える内容となっている。業界の反応が注目されるところだ。 


 また今週の新潮では、『日本一自由な学校「麻布中高」の「自由」の授け方』と銘打って、同校出身のライターが特集記事を書いている。新制中高の卒業生が出た1954年以来、東大合格者数ランキングベスト10を外れたことのないこの学校は、橋本龍太郎、福田康夫両総理をはじめ、数々の著名人を輩出、制服も校則もない自由な校風で知られている。 


 今回の記事では、この校風の確立を69~71年の学園紛争にまで遡り、紛争を生徒側の勝利に導いた“伝説のリーダー”を取材、セクトの介入や暴力沙汰という負の側面にも触れながら当時を語らせている。卒業生にはあの前川喜平・前文科次官もいる。現在の校長・平秀明氏が解説する“麻布のDNA”=「権威・権力に盲従しない、しなやかな反骨精神」に照らせば、前川氏の“造反”にも、麻布OBならではの気骨が見て取れるという。 


 週刊文春は、山尾志桜里代議士の不倫疑惑を暴いた流れから、民進党スキャンダルの展開を図ったが、正直、続報はパッとしない。そのメインは『前原誠司民進党代表 北朝鮮美女のハニートラップ疑惑』。18年前の北朝鮮訪問時に撮られた“接待係”との仲睦まじい写真がある、という話だが、この相手は記事を読む限り、訪問団一行が観光名所でのバーベキュー接待を受けた際、同席したコンパニオン的な女性だったようで、衆人環視下で白昼堂々と撮られた写真でしかない。 


 あとは“関係者の証言”として、前原氏が北朝鮮問題で甘かった、というぼやっとした話が書かれているだけだ。美しいコンパニオンの接待は、90年代に相次いだ政治家の訪朝に付き物だった光景で、個別の“夜の接待”とはまた別の話だ。 


 山尾氏の続報にも新味は感じられなかった。「男女の関係ではない」という本人の苦しい釈明を追及し、不倫疑惑の相手・倉持麟太郎弁護士の“女癖の悪さ”を記事は伝えるが、いずれにせよ、世間の判定は前回の第1報で固まっている。女優・斉藤由貴の件、あるいはベッキーの件でも感じたことなのだが、この手の問題の深追いは、傍目には痛々しいだけだ。鮮やかなスクープであればなおさら、一撃で終わらせるほうがスマートに思える。 


………………………………………………………………

三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。98年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。07年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って』(ともに東海教育研究所刊)など。最新刊に沖縄県民の潜在意識を探った『国権と島と涙』(朝日新聞出版)がある。