10月11日~13日まで東京ビッグサイトで開催された「ITpro EXPO 2017」に参加してきた。目的は、勤務先(木村情報技術)が出展していた「ビジネスAI2017」と興味があった「デジタルヘルス2017」を取材することだった。


 デジタルヘルスには、面白いソリューションがあった。排尿のタイミングを知らせてくれる排泄予知ウェアラブル「DFree」は、施設の高齢者に身につけさせることにより、職員が適切なタイミングでトイレに誘導することができるようになり、オムツの消費量も大幅に削減できるという。将来的には、私が20歳代の時に苦しめられた過敏性腸症候群の“危機”を予知することも可能になりそうだ。 


 デジタルヘルスからビジネスAIのスペースに移動する途中に、オープンセミナーが開催されていたので足を止めた。演者は、ITpro Activeの松本敏明副編集長だったが、“MarTech”の時代という耳慣れないキーワードを口にしていた。MarTechとは、MarketingとTechnologyの重ね合わせた造語であり、今後は、「ABM(Account Based Marketing)で“個客”ではなくアカウントに面的に接触することが求められる」と指摘していた。「この後、別会場でABMの講演があるのでぜひ聴いてください」と松本氏が講演の最後にアピールしていたので、素直に別会場に向かった。 


 別会場の講師は、ABMを「全社の顧客情報を統合し、マーケティングと営業の連携によって、定義されたターゲットアカウントからの売り上げ最大化を目指す戦略的マーケティング」と定義するシンフォニーマーケティングの庭山一郎社長だった。


 庭山氏は、 


●SFAは本来、顧客を管理するものなのに、日本では営業マンを管理するシステムになっている。 


●セールスパーソンは、管理するほど“売らなく”なる ●彼らはもともと売りたい人。売ることしか存在価値を示せないのだから。


 ●そんな営業を信じられないならマーケティングやめたほうがいい 


●彼らに商談させるためには「デマンドセンター」が必要 


など、MRが聞いたら首を何度も上下させそうなことを述べていた。 


「今日はA医師に面談して、この資料を使って説明する」というようなシステムは、確かに一部の優秀なMRには有効だ。しかし、チーム医療、地域包括ケア、地域医療連携推進法人といった“アカウント”単位の攻略が必要な時代には、営業機会(MRなら面談機会)を創出する「デマンドセンター」が求められる。 


…………………………………………………………………

川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。