シリーズ『くすりになったコーヒー』


「コーヒーはがダイエットに効果あり」とする俗説が多々あります。根拠は様々ですが、筆者が満足できる根拠はこれまでありませんでした。「コーヒーは食欲を抑える」という根拠はありますが、食欲を多少抑えることはあっても、体重減少までは行きません。


「カフェインは興奮性なのでアドレナリンの分泌を促して脂肪を燃やす」との説も弱いものです。しかも薬理学的にはカフェインよりもクロロゲン酸の方に分があるように見えるのです。実際に(株)花王食品は、ヘルシア缶コーヒーにクロロゲン酸を添加して、「脂肪を燃やすトクホ商品」として製造・販売しています。しかし、この缶コーヒーにはレギュラーコーヒーにはない特殊な加工が施されています。


 そんな状況の中で去る6月24日発表のサイエンス・レポート誌に、「えっやっぱりそうだったの」とちょっと驚く論文が載っていました(詳しくは → こちら )。


●インスタントコーヒーを1杯飲むと、赤外線サーモグラフィーで褐色脂肪組織部位が赤色になる。


 百聞は一見に如かずですから、写真をご覧ください



 論文には「コーヒーの、恐らくカフェインで褐色脂肪組織が活性化する」と書いてはありますが、俄かには信じがたい気もしないではありません。褐色脂肪細胞の活性化は、脂肪を熱に変えてダイエットに役立つという話に疑いの余地はないのですが、「この通り真っ赤になりますよ」と魅せられた写真には誰もが驚いてしまいます。


 この燃焼反応に関与しているのはミトコンドリアの1型脱共役タンパク質UCP1と解っています。しかし、その制御因子は今のところほとんど不明です。この論文では、カフェインが褐色脂肪組織の量と機能を高めることを、分子レベルで確認しているので、疑う余地はないのですが、たった65ミリグラムのカフェインを含むネスカフェを飲んで30分後の発熱と聞けば、そりゃあ誰もが驚いてしまいます。


●痩せられずに困っている肥満症の方は是非ともお試しください。


 論文が正しければ良い結果が期待できます。


(第385話 完)


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