シリーズ『くすりになったコーヒー』
実はボブ・ディラン氏は医者になりたいと思ったことがあるらしい。
●ボブ・ディランの曲名が世界中の生物医学論文の表題に盗用(?)されている(詳しくは → こちら)。
こんな論文が実際にあるなんてビックリですが、氏のノーベル賞が決まる1年前のBMJ誌(英国医師会雑誌)の原著論文として、「曲名別引用回数解析結果」が載っているではありませんか!
ビートルズとほとんど同時期に登場したボブ・ディランは今も現役で活動中です。
筆者がこの論文に気づいたのは、今週号のNature誌に引用されていたからです。しかもご丁寧に曲名別回数がグラフ化されての引用です(上図を参照)。至極残念なことに、「コーヒーをもう1杯:One more cup of coffee」はランクインしませんでした(詳しくは → こちら)。
ボブ・ディランの曲名は、自曲のものというだけでなく、広く世界の隅々で起こる社会現象の1つ1つに当てはまるという特徴を持っています。例えば有名な、The times they are a-changin’の日本語訳「時代は変わる」などは、当てはまらないものを探す方が難しいくらいで、その引用回数は断凸トップの135回でした。
ということで、ボブ・ディランの数ある曲名が、生物医学論文の表題に使われているのです。あるときは癌の論文に、またあるときは心臓病の論文に使われているのです。例えば「Gastric cancer:The times they are a-changin'(消化器癌最新治療:時代は変わる)」というような総説論文が沢山あるのです。医学分野だけで数え上げても、少なくとも昨年末までに213回も使われているそうです。
●BMJ誌の論文著者によれば、ボブ・ディランの医者になりたかった想いが、曲名に現われたと言える。
しかし、その想いは医学だけではありません。元気な人にとっても日常生活に密着している曲名は、Blowin’in the wind「風に吹かれて」に見ることができます。どういう論文の表題になったかというと、勘の良い御仁は既にお察しの通りで、気象学雑誌なのです。偏西風がどういう原理で波打つのか・・・といったような論文なのです。
●ボブ・ディランの曲名と科学論文表題の関係に注目したのはカロリンスカ研究所のファン・クラブだった。
実は、そうなのです。カロリンスカ研究所といえば、ノーベル賞選考委員会で有名ですが、ボブ・ディランの曲名と科学論文表題の関係を調べたのは、この研究所の研究員で、ボブ・ディランの熱烈なファン・クラブの連中なのです。そして彼らは調査結果を、ノーベル医学賞受賞者の論文も沢山載っているBMJ誌に投稿して、見事インパクト指数の高い学術論文として成立させたのです。昨年の12月のことでした。
それから1年、この論文が今年のノーベル賞選考過程で果たした影響力は如何程だったか、メディア報道には一切ありません。それでも今頃、ファン・クラブの連中はロックなカリフォルニア・ボジョレ・ヌーボで乾杯してるに違いない! ボブ・ディラン本人が同席しているかどうか、もし居たとしたら「赤ッかんべ〜」で杯を挙げているのではないでしょうかね。
(第294話 完)
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