シリーズ『くすりになったコーヒー』


●去る10月20日、ラガーマン平尾誠二さんが胆管細胞癌で亡くなりました。先ずはご冥福を祈ります。


 さて胆管癌とは胆道癌とも言われますが、発見が難しく、治療しても生存率は非常に悪いという難病です。国立がん研究センター(国がん研)のHPによれば、相対5年生存率は30%、膵臓癌と並んで最も低い数値です。


 コーヒー習慣の疫学研究でも胆管癌の研究例はほとんどありません。ようやく昨年になって論文が出はじめました。胆管の部位によってデータが異なるので、まず紹介するのは、肝内胆管と呼ばれる部位の発癌です(図1を参照)。




●コーヒー習慣は肝内胆管癌に罹るリスクに影響しない(詳しくは → こちら)。


 性質の悪い癌ですから、コーヒーの影響には限界があって、せめて「発癌リスクを高めない」・・・と云うぐらいで満足しなくてはいけないようです。故人もコーヒーは好きだったそうですから、コーヒーが病気を早めた訳ではないはずで、せめてもの慰めと言うべきでしょう。


 では日本人ではどうでしょうか?肝内胆管癌についてのデータはありませんが、肝外胆管癌について、国がん研が今年になって発表しました(詳しくは → こちら)。論文と同じ内容がHPにも載っているので、そちらも参照して下さい(詳しくは → こちら)。


 国がん研の緑茶とコーヒーのデータをHPから抜粋して図2に示します。




 説明によりますと、緑茶には統計学的な有意差があるのですが、コーヒーにはありませんでした。しかし、図2を見る限り、緑茶もコーヒーも似たようなデータで、緑茶1日数杯、コーヒー1日1杯で1∼2割の数値改善が期待できるようです。


 図2の緑茶データには番茶、煎茶、玄米茶が含まれていますが、番茶と玄米茶にカフェインはほとんど含まれていません。一概には言えませんが1杯に10?前後とのことです。一方、煎茶ならその倍程度が含まれていて、危険度の低下率は煎茶が番茶・玄米茶より若干ですが高いようです。


 細かいことはさて置くとして、肝外胆管癌の場合には、最低でもこれだけは確かなことです。


●緑茶とコーヒーには胆肝癌リスクを高める傾向は認められない。


 その上で、肝外胆管癌にはリスクを下げる作用があるかも知れないので、毎日のコーヒー習慣(お茶習慣も)には捨て難い魅力があるということです。


(第293話 完)


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