シリーズ『くすりになったコーヒー』
「煙突のススのように真っ黒なコーヒー」は「発癌物質に違いない」と疑われて始まったコーヒーと癌の因果関係調査。疫学の方法論を改良しつつ進化して、ついに結論が見えてきました。図にしてみます(9月22日Facebookで公開済み)。
図の棒グラフは、コーヒーをほとんど飲まない人が臓器癌になるリスクを1.0として、毎日飲む人のリスクを示しています。今年8月の時点でのPubMed論文のまとめです。特記すべきは、1.0を超えている喉頭癌と食道癌について、「コーヒーはリスク因子ではなく、60℃以上の熱い飲みものが原因である」と、国際癌研究機関(IARC)が訂正したことです。これはいわば疫学調査の欠点で、アンケートの質問項目に「飲んだコーヒーの温度は?」などと聞いても無駄でしょう。
もう1つは肺癌です。すでに報道されたように、国立がん研究センターが、「受動喫煙は肺がんのリスク因子ではない」とのJTコメントをほぼ完璧に論破したこと。これによって、喫煙、喫煙歴、受動喫煙(副流煙)は揃って確実に肺がんのリスク因子として太鼓判が押されたのです(詳しくは → こちら)。
さて、ごく最近になって、ハーバード医大の研究グループが「コーヒーと臓器癌」のメタ解析データを発表しました。雑誌発行日は9月26日なので、Facebook公開の4日後、タイミングの良さにビックリでしたが、要するにコーヒー疫学はそういう所まで来ているのです(詳しくは → こちら)。
両者の数値を並べて比較しましょう(表を参照)。筆者の数値は、各臓器癌についてPubMed収載のメタ解析論文をまとめた平均値でそれなりの精度。一方、ハーバード医大のデータは各臓器癌の原著論文に遡っての正確な解析です。従って両者の間には、原著論文の差があって、それが数値の違いに反映されています。
ハーバード医大のデータに喉頭癌が含まれていない理由は定かでありませんが、IARCの発表を受けての措置かも知れません。同じく、*印の食道癌を鑑別せずに解析したのもそのためかも知れません。また肺癌について、ハーバード医大の数値が飛びぬけて大きい理由は、古い原著論文を選択しているので、喫煙と受動喫煙の影響が残されているからと思われます。
【総括…一応の結論】毎日のコーヒー習慣は、臓器癌リスクを高めることはなく、臓器によっては発癌リスクを軽減している。
●コーヒー好きな人は幸せである!
(第290話 完)
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