シリーズ『くすりになったコーヒー』


●学名を“Oligonychus coffeae”と呼ぶ赤色クモダニ(俗名Red Spider Mite)がいるらしい(写真左を参照)。


 この葉ダニ、学名の意味は「コーヒーノキにつく爪が沢山あるダニ」ですが、英語の俗名を直訳して日本語の俗名になっています。俗名は学名とは似ても似つかない代物なので、筆者のように誤解する人が大勢いるはずです。実はこのダニ、コーヒーノキには付きません。



●Oligonychus coffeaeが、インドのチャノキに蔓延して、一部は殺虫剤フェンプロパトリンに耐性を獲得している(詳しくは → こちら)。


 何とOligonychus coffeaeはコーヒーノキにつくのではなく、チャノキについて汁を吸っているのです。もしかしたら殺虫剤だけでなくカフェインにも耐性を獲得したのかも知れません。それとも中途半端な耐性なので、カフェインは好きだけどコーヒーノキはきつ過ぎるのかも知れません。植物にとってのカフェインは、害虫から身を護る抗生物質/殺虫薬みたいなものなので、普通の虫が食べ過ぎるとまともに生きては行けないのです。


 殺虫剤のフェンプロパㇳリンは、1988年に住友化学が開発した殺虫剤で、海外でも使われています。殺虫スペクトラムが広く、アブラムシとか蝶の幼虫、ハダニなどに広く効くのだそうです。コーヒーノキにつくダニにも薬効を発揮する殺虫剤です。


コーヒーノキにつくダニは、学名Oligonychus ilicisといって、coffeaeとは呼ばない(写真右を参照)。


 日本名はコーヒーアカダニといって、ちゃんと「コーヒー」の字がついています。コーヒーアカダニは、チャノキにつく赤色クモダニとよく似ていて、一見見分けがつきません。実に元気に動きながら葉の栄養と水分を吸い取ってしまいます。勿論カフェインには耐性で、食べれば益々元気になる・・・のだと思われます。


 ではどうして学名を間違えたのでしょうか?ちょっと好奇心で想像してみました。最もありそうな原因は、「学名をつけた人がコーヒーとお茶の木の区別がつかなかった」から・・・そして、ダニに食われて生気を失ったチャノキの葉をコーヒーノキの葉と思い込んで、赤色クモダニにcoffaeaeとつけてしまったのではないでしょうか!?


●本当のこと知ってる方、もし宜しければ教えて下さい。


(第289話 完)



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