シリーズ『くすりになったコーヒー』
既にFacebookでお知らせした話題ですが、ちょっと詳しく書いてみます。
●国連が「毒物」に分類している3-塩化プロパン-1,2-ジオール(3-MCPD 図を参照)が、コーヒー用の紙製品から検出された(詳しくは → こちら)。
以前から3-MCPDは加工食品に微量にあると言われてきました。農水省のHPを参照して下さい(詳しくは → こちら)。民間では花王食品のHPに書かれています(詳しくは → こちら)。
3-MCPDの由来について、現在までの解釈では、アミノ酸製造工程の副産物なので、調味料原料アミノ酸に混ざっています。そのため、広範囲の加工食品に広く分布しているようです。含有食品について農水省で調査進行中とのことです。
日本政府の食品安全委員会によれば、3-MCPDの健康への影響は少ない見通しですが、新データを引き続き集積中とのことです。 海外には暫定的な規制値があるとのことですが、あくまで暫定的な数値です。参考までに、現時点での海外公的機関による見解を書いておきます。
●FAO/WHO合同食品添加物専門家会議は、各国の実態調査データや毒性試験データを一括して集積し、2016年11月に国際会議の場で評価する(詳しくは → こちら)。
EU食品安全委員会も歩調を合わせているので、3-MCPDに対する食品基準は近々合意を得て共通指針が出るはずです。日本政府も追随すると思われます。いずれにしても、3-MCPDは加工食品の生産工程で不可抗力的に産生し、製品に混入しています。ですから、この物質が食品ではない紙製品に含まれているなどとは、ほとんど誰も予想しなかったことなのです。
●カナダ産とドイツ産の紙フィルターからは、0.0005-0.0015mg/gを検出(上記の論文を参照)。
これに加えて、香港の加工食品からは<0.00045mg/gを検出。一方、EU規制値は、1日上限0.002mg/kg体重。CODEX(国際規格)では0.4mg/kg体重を提案中。この他にも断片的なデータは色々ありますから、どうまとめるのか11月の国際会議の結果次第となりそうです。
それでは皆さん、ちょっと実験してみましょう。
●自分が使っているコーヒー用の紙製品、重さ測ってみましょう。
筆者の測定では、\100ショップの紙コップ1ヶ4.8g、普通の紙フィルター1枚1.2g、計6.0gなり。カナダのデータを入れますと、3-MPCDの最大含有量は0.003-0.015mgとなりました。この数値を単純比較してみますと、体重kgあたりのEU規制値を超えています。ちょっと捻くれた味方ですが、規制と現実は・・・世の中ギリギリってことですかね・・・とついつい思ってしまいました。
最後に国連分類の毒性について一言。今のところ3-MCPDに重篤な毒性報告はありませんが、類似化合物に死亡例が報告されています。日本の化学工場でジクロロプロパノールのタンクを清掃していた作業員2名が倒れ、救急搬送されたものの、4日目と11日目に肝壊死のために亡くなりました。(詳しくは → こちら)。
●少量の3-MCPDに慢性毒性があるとしたら図のような肝障害の可能性が高い。
ということなので、ちょっと気になるという方は、健康診断の肝機能に気配りしていれば、大事に至らずに済みそうです。
(第288話 完)
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