シリーズ『くすりになったコーヒー』


 コーヒー・ポリフェノールが注目されるなか、サプリメントなど乱用の行き過ぎには天罰が下るかも知れません。2015年12月のネイチャー誌論評です。


●抗酸化薬の科学神話が消えることはない(詳しくは → こちら)。


 神話とは、現実にはあり得ない空想の世界。「神話が消えない」とは、空想があたかも現実であるかのような錯覚が消えないということ。この論評には、健食メーカーがPRする「抗酸化サプリメントの効能」が空想であることを示す論文が引用されています。


●活性酸素を大量に作り出すよう遺伝子操作した動物でも、早死することはなかった(詳しくは → こちら)。


 動物は原虫ですが、活性酸素の酸化ストレスを受けながら普通に長生きしたのです。人間なら差し詰め強いストレスを受けながらも、病気にならず普通に寿命を全うする人のことでしょう。


●抗酸化物質を大量に作り出すよう遺伝子操作した動物でも、長生きはしなかった(詳しくは → こちら)。


 この動物はマウスです。抗酸化物質を大量に作って、活性酸素を次々に消去しても、普通に年を取って、普通に死んで行きました。つまり、活性酸素が寿命を縮めることはないし、抗酸化サプリメントを飲んで長生きすることもないというのです。


 これら2つの実験結果が人間に当てはまるかどうかは不確定です。もし当てはまれば抗酸化サプリメントは役立たずということになります。ネイチャー誌が『神話は消えない』と言うわけは、10年前にも同じ話があったからです。


●実際に抗酸化ビタミンを試験薬とする『ランダム化比較臨床試験』の結果は、無効だった。


 20件以上もある臨床試験の長ったらしい結果を明快にまとめた解説が出ています。題して『抗酸化神話の崩壊をめぐって』。書いたのは京都府立大名誉教授で薬学博士の水谷民雄氏でした。氏の解説は電子版4部構成で、どれもダウンロード可能です。


 抗酸化剤神話の崩壊を巡って(1)(詳しくは → こちら


 抗酸化剤神話の崩壊を巡って(2)(詳しくは → こちら)。


 抗酸化剤神話の崩壊を巡って(3)(詳しくは → こちら)。


 抗酸化剤神話の崩壊を巡って(4)(詳しくは → こちら)。


 (1)〜(4)を読む時間がない・・・というお方は次のボードをお読みください。抗酸化ビタミンの発見から、どうして神話が生まれたのか、「神話のウソ」の経緯、そして勧告が書いてあります。ポリフェノールにも言えることだと思われます。




●サプリメントとして抗酸化ビタミンを飲んでも癌リスクは減らないし、心臓病死も減らないし、飲み過ぎれば逆に病気になる(論文多数あり)。


 野菜や果物や魚を食べる人は心臓病にも癌にもなり難いし長生きする(論文多数あり)。にも拘らず、そういう食品の有効成分であるビタミンを飲んでも効き目は出てこない。この違い、お分かりですよね。野菜や果物に心臓病や癌の予防効果があるのに、ビタミンだけを取り出して作ったサプリメントは無効なのです。ビタミンが効くのはビタミンが不足した『欠乏症』のときだけなのです。


 かくして抗酸化薬神話は消えたと思われたのですが、実は抗酸化サプリメントの売り上げは減ることはなく、逆にどんどん伸びています。神話が崩壊しても、医者や大学の研究者は相も変わらず・・・『害にはならないし、役に立つことも考えられるのだから、摂らないと損をする』と言い続ける始末です。


 その上、政府の研究機関までが、大学研究者や民間企業と結託して地域起しとかトクホとか何とか言って、ポリフェノールだとかの新サプリメント開発にうつつを抜かしているのです。国の予算を受けての話ですぞ!


●皆さん、効かないサプリメントより自然のままの食べ物を食べては如何ですか!?


 残念なことに、神話はコーヒーにも影響しています。コーヒーの病気予防効果を強めたいという浅はかな願いで、種々の添加物を加えたコーヒーが売られているのです。注意すべきは、『コーヒー成分のバランス』。浅煎りには浅煎りの、深煎りには深煎りのバランスがあって、互いに欠点を消しながら長所を生かしているのです。添加物はこのバランスを崩します。


 次回はコーヒー・ポリフェノールも含めて、食品と食品成分の抗酸化力の裏側に迫ります。


(第274話 完)


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