シリーズ『くすりになったコーヒー』


●煙突掃除屋は皮膚癌で死ぬ。



 今から100年前の欧米にはそんな話がありました。欧米の病理学者たちは、煙突に溜まった煤(すす)が発癌物質であると考えていました。そして煤から分離した真っ黒なタールを兎の耳に塗り続けていたのです。世界初となる発癌実験でした。


その頃、東大医学部の病理医だった山極勝三郎も、「タールで発癌」に興味津々でした。日本の煙突掃除屋にも癌で死ぬ人が多かったからです。山極は考えました。


●よ〜し、弟子の市川厚一と兎の耳にタールを塗ろう。


 先行していた欧米の研究者たちが発癌実験に失敗して手を引き始めた頃、山極と市川は実験開始を決断しました。一体全体どんな勝算があったのでしょうか?そこには『聞いてびっくりポン』の確かな理由があったのです。


●相手が1年で撤退するなら、こっちは2年続けよう。相手が2年で撤退なら3年続ける。癌になるまで続ければ必ず発癌する。


 山極はそう言って市川を鼓舞し続けたのです。そして遂にその日がやってきました。
1915年のことでした。山極と市川は『兎の耳にも3年だ!』と雄叫びをあげて喜んだことでしょう。




 しかし、山極と市川のタール発癌の成功は、コーヒーにとっては悲劇の始まりだったのです。


●煙突の煤みたいに真っ黒なコーヒーは、発癌物質に違いない!


 その証拠に、コーヒーは今でも国際癌研究機関(IARC)の発がん物質リストに載っていますし、それを引用して日本の厚労省も『分類2B:人に対して発がん性を示す可能性がある物質』にコーヒーを載せているのです(詳しくは → こちら)。


 さて皆さん、今時の常識では『コーヒーは癌を予防する』代表的な飲み物なのに、どうしてお役所は信じてくれないのでしょうか?その答えはただ1つです。


●一度冤罪に問われると、冤罪が晴れるなどとは奇跡なのだ。


 あたかもインターネットに1度流れた画像や呟きが永久に消えなくなるのと同じです(詳しくは → こちら)。


『珈琲一杯の薬理学』は、100年前にコーヒーに懸けられた冤罪の払拭に頑張り続けます。皆さん、応援よろしくお願いします。


(第267話 完)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
空前の珈琲ブームの火付け役『珈琲一杯の薬理学』
最新作はマンガ! 『珈琲一杯の元気』
コーヒーってすばらしい!
購入は下記画像をクリック!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・