シリーズ『くすりになったコーヒー』
この世にまだ化学がなかった時代、人々は薬草を使って病気を癒していました。薬や貴金属を作り出そうとした錬金術の時代を経て、ようやく1828年、人類初となった有機物の化学合成「動物の腎臓を使わずに尿素を合成」に成功しました。Earth-Shattering News(地球をひっくり返すようなニュース)だったそうです。
医薬品へのもう1つの道は、薬草から薬になる成分だけを取り出す(抽出する)ことでした。この道は尿素の合成より先に開拓されていたのです。1819年、コーヒーからカフェインの発見は、当時の人々に信じられないほど強烈なインパクトを与えたそうです。
●コーヒーからカフェインの結晶がとれたのは、尿素の合成より早かった。
カフェインの効き目は、コーヒーの効き目とよく似ていたので、人々はコーヒーのことをカフェインと呼び、カフェインのことをコーヒーと呼ぶようになりました。「コーヒー=カフェイン」という、科学的には大間違いのコーヒー悲劇の始まりでした。
●「毒ではないコーヒーに毒のカフェインが入っているからコーヒーは毒である」
以前にも書いたように、「カフェインは劇薬」なのです。ですから人が1度に3〜5gのカフェインを飲むと死ぬことがあるのです。コーヒーにしたら30〜50杯の一気飲みに相当します。毒にならない量ならば薬になります。そんなカフェインを含んだコーヒーには、カフェインだけでは見られない不思議な魔力があるのです。
●詩人で役人だったゲーテは、「コーヒーには人に生気を生む化学物質が入っている」と考えていた。
そんなゲーテの所に、ある日のこと一人の化学者が訪ねてきました。
ルンゲとゲーテの時代にABO血液型は未発見だったのですが、現代の化学者の血液型は圧倒的にB型だそうです。真面目で頑張り屋の代表的な血液型と考えられているのです。
ノーベル化学賞の田中耕一さんもB型です。片や物理学賞は湯川秀樹さん以下A型かO型が多いようです。血液型と性格の関係には興味深い話が沢山あります。ゲーテは一般的には詩人ですが科学者で政治家でもあったようですから、血液型はO型の可能性が高いと思います。本当のことは解りませんが、ゲーテとルンゲの性格は全然違っていたのです。
ク○がつくほど真面目なルンゲが、自由奔放なゲーテの言うままにならなかったとしたら、カフェインの発見はずっと後の世になっていただろうし、「コーヒーは毒だ」という冤罪はなかったかもしれません。
さて、ゲーテがルンゲに言った「コーヒーの目覚まし物質」は、ルンゲの真面目さによって2年かけて実現しました。しかし、カフェインは「人に生気を生む化学物質」ではありません。なぜなら、カフェインを飲んで夜更かしすれば、翌日は確実に疲れているのです。
●コーヒーに含まれている「人に生気を生む化学物質」とは、「カフェイン+何か」の組み合わせで、コーヒーだけに含まれる。
カフェインの発見によって、コーヒーの秘密がまた1つ増えたのです。
(第259話 完)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
空前の珈琲ブームの火付け役『珈琲一杯の薬理学』
最新作はマンガ! 『珈琲一杯の元気』
コーヒーってすばらしい!
購入は下記画像をクリック!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・